奉
『奉教人の死』
ほうきょうにんのし
芥川龍之介·近代
キリシタン伝説に材を取った芥川中期の短編
文学
この著作について
芥川龍之介が1918年9月、雑誌『三田文学』に発表した短編。長崎の切支丹(キリシタン)伝説に材を取り、古語の文体を駆使した「切支丹もの」の代表作で、『地獄変』『藪の中』と並ぶ芥川中期の達成を示す作品である。
【内容】
物語は長崎の教会堂で寺子にされたローマン名「ろおれんぞ」という美しい少年を中心に展開する。彼は町娘の父から身ごもらせたと濡れ衣を着せられ、破門され乞食となって放浪する。ある夜、その娘の家が火事になると、ろおれんぞは炎のなかから娘の赤子を救い出し、自らは大火傷を負って息を引き取る。息絶える瞬間、変わり果てた胸のあたりから、彼が実は少女であったことが明らかになる。
【影響と意義】
日本近代文学におけるキリシタン文学の系譜(遠藤周作『沈黙』へと続く)の初期の重要作として位置づけられる。古語文体と西洋的物語様式を接合する芥川の実験は、以後の日本文体論にも影響を残した。
【なぜ今読むか】
短く凝縮された物語が、最後の一行で世界の見え方を反転させる読書体験を確実に届ける。アイデンティティと献身の主題は、ジェンダーを論じ直す現代にも新しい角度から響く。
著者
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