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実践理性批判

じっせん りせい ひはん

カント·近代

道徳法則を理性から導いたカント倫理学の主著

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哲学

この著作について

カントが18世紀末に公刊した、道徳の原理を純粋理性から導き出す義務論的倫理学の主著。

【内容】

前著純粋理性批判で理論理性の限界を画したカントが、同じ理性が実践の領域でどのように働くかを問う。中核に置かれるのが「汝の意志の格率が、同時に普遍的立法の原理として妥当するように行為せよ」という定言命法である。「その行為を誰もがするようになっても矛盾しないか」を自分に問うというテストだ。道徳は結果や感情ではなく、理性が命じる義務に従うことによって成立するとし、人間の尊厳は他人を手段としてだけ扱わないことに根ざすと説かれる。結びの「私の上なる星空と、私の内なる道徳法則」という言葉は広く知られている。

【影響と意義】

道徳の根拠を結果でも伝統でもなく、人間理性の普遍的な自己立法に求めたことが決定的に新しかった。義務論的倫理学の最重要テキストとして、現代の人権論・生命倫理・法哲学にも影響を与え続け、ロールズの正義論もこの系譜の上に立っている。

【なぜ今読むか】

「誰もがそうしたらどうなるか」を考える定言命法のテストは、日常の道徳的判断にそのまま応用できる思考ツール。功利主義的発想が強まる時代に、義務と尊厳から考える補助線として今も有効。

さらに深く

【内容のあらまし】

本書は『純粋理性批判』の続編として書かれた。理論理性が認識できないとされた自由・神・魂の不死は、実践理性の領域では別の仕方で確保される、という構成である。

第1部は「純粋実践理性の分析論」。出発点は、行為の格率すなわち主観的な行動原理である。同じ「嘘をついてでも金を借りる」という格率を、もし全人類が普遍的に従ったらどうなるかと問えば、約束という制度自体が崩壊し、自分の借りる行為も成立しなくなる。この自己矛盾のテストを通る格率だけが道徳法則として妥当する。これが定言命法の中核である。傾向や利害から独立に、理性が自分自身に法を与える「自律」こそが道徳の本質だとされる。

続いて道徳法則と人間の感情の関係が論じられる。道徳法則の前で人は自分の傲慢を打ち砕かれ、それでも理性的存在としての尊厳を実感する。この独特の感情が「尊敬」と呼ばれる。義務に従う行為だけが真に道徳的であり、結果や好意から行われたなら、たとえ法則と一致していても道徳的価値を持たないという厳格な区別が引かれる。

第2部「弁証論」では最高善の問題が扱われる。徳と幸福は本来別物だが、両者の調和が私たちの理性の必然的な要請である。この要請が成り立つためには、自然と道徳を統べる神と、徳の完成のための魂の不死が要請されねばならない。理論的に証明はできないが、実践的に信じるよう求められる「要請」という独特の身分でこれらが復活する。

結びの一句「私の上なる星空と、私の内なる道徳法則」は、外的自然の壮大さと内面の道徳法則の崇高さを並べ、人間の二重の所属を凝縮した名文として刻まれている。

著者

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