心
『心の概念』
こころのがいねん
ギルバート・ライル·現代
「機械の中の幽霊」批判でデカルト的心身二元論を解体した分析哲学の古典
哲学
この著作について
ギルバート・ライル(Gilbert Ryle)が1949年に刊行した分析哲学の古典(原題『The Concept of Mind』)。オックスフォード日常言語学派の代表作として、二十世紀後半の心の哲学の出発点となった記念碑的著作である。
【内容】
ライルはデカルト以来の心身二元論を「機械の中の幽霊のドグマ(dogma of the ghost in the machine)」として徹底批判する。心と身体を二つの実体として並置する従来の理解は、「ケンブリッジ大学を見た後に、建物は見たが『大学』はどこかと問う」のと同じ「カテゴリー・ミステイク」にすぎない。心的語彙は行動の傾向性(dispositions)を記述する語彙であって、身体の内側に隠れた特殊実体を指すのではない。本書は知性・意志・情緒・自己知・感覚・想像・知的行為・心理学の方法論という章を次々に進め、それぞれの領域で二元論的発想がどのようにカテゴリー・ミステイクを犯しているかを示していく。「どうすれば分かるか(knowing how)」と「何を知っているか(knowing that)」の区別は特に有名で、後の暗黙知論・熟達論・教育論に広く継承された。
【影響と意義】
ウィトゲンシュタイン、オースティン、スティブンソン、ストローソンら日常言語学派と並んで、分析哲学の言語論的転回を決定づけた。認知科学、行動主義心理学、AIの行動主義的アプローチ、機能主義心の哲学など、後続のあらゆる心の科学の起点となった。
【なぜ今読むか】
「脳の中のどこに意識があるのか」という問い方自体が適切なのかという根源的な疑いを、今なおもっとも鮮明に提示し続ける古典である。