医
『医学大全』
いがくたいぜん
イブン・ルシュド·中世
アヴェロエスの7巻からなる医学百科。中世西欧で広く読まれた。
哲学
この著作について
12世紀アンダルシアの哲学者イブン・ルシュド(アヴェロエス)が著した7巻からなる医学百科である。アラビア語原題は Kitāb al-Kulliyyāt fī al-Ṭibb(医学の総論の書)、ラテン語訳は『コリゲット(Colliget)』として中世西欧に知られた。1153年から1169年頃にかけて成立したと考えられている。【内容】解剖学、生理学、病理学、診断学、治療学、衛生学、薬学を体系的に扱い、ガレノスの医学理論とアリストテレスの自然学を踏まえながら、医学の一般原理を整理する。個別疾患の臨床的処方よりも、病気の原因論や身体のはたらきの理論的枠組みの提示に重点が置かれている。同時代のイブン・ズフルが個別治療を扱う実践書を別途著しており、両者は補完関係にある。【影響と意義】13世紀にラテン語訳されて以降、中世ヨーロッパの大学医学部で長くテキストとして用いられた。アヴェロエスを「哲学者」としてだけでなく「医師」としても西欧に伝え、彼の理性的・体系的思考の射程の広さを示す資料となっている。【なぜ今読むか】哲学と医学が一つの知として結びついていた時代の思考様式を知る一次資料となる。日本語完訳は確認できず専門家以外には敷居が高いが、思想史的位置の重要性は大きい。
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