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完全な人間を目指さなくてもよい理由

かんぜんなにんげんをめざさなくていいりゆう

マイケル・サンデル·現代

サンデルが遺伝子強化への倫理的反論を展開した生命倫理書

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哲学

この著作について

ハーバード大学の政治哲学者マイケル・サンデルが、ブッシュ政権下の生命倫理諮問委員会での経験をもとに、遺伝子強化や人間改造の論点に向き合った生命倫理の短い名著。

【内容】

本書はまず、一卵性双生児の片方にだけ遺伝子編集を施すような想定から話を起こす。遺伝子デザインによる子どもの性質選択、スポーツ選手のドーピング、認知能力を高める薬剤、デザイナーベイビーといった事例を丁寧に検討し、「自律と同意があるなら何をしてもよい」というリベラルな論拠では、そこに感じる違和感を十分に説明できないと主張する。サンデルが鍵として差し出すのは「ギフト(贈り物)としての人間性」への感受性である。自分の能力や子どもの特質を、あらかじめ設計されたプロダクトとしてではなく、与えられたものとして受け取る態度を失ったとき、連帯・謙虚・責任といった徳が蝕まれると論じる。

【影響と意義】

生命倫理の保守的立場からのもっとも明快な論考として、世界各国の生命倫理教育・政策議論で参照されている。エンハンスメント論、スポーツ倫理、遺伝子編集の議論で避けて通れない主要文献となっている。

【なぜ今読むか】

ゲノム編集、スマートドラッグ、AIによる能力拡張が具体的現実となる今、「なぜそれに違和感を覚えるのか」を自分の直観から言葉にし直す作業は、一人ひとりに求められる。短くても濃い思考の手引きである。

著者

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