『資本主義と自由』
しほんしゅぎと じゆう
フリードマン·現代
経済的自由が政治的自由の条件であると論じた新自由主義の古典
この著作について
シカゴ学派の経済学者ミルトン・フリードマンが1962年に公刊した、自由市場の擁護と政府介入への批判を明快に論じる新自由主義の代表的著作。
【内容】
冒頭で経済的自由は政治的自由の必要条件であり、両者は切り離せないと宣言される。政府の役割は、契約の履行・法の支配・通貨供給・外部性の処理など最小限に限られるべきだとし、ケインズ的な積極的介入主義が厳しく批判される。変動為替相場制、教育バウチャー、負の所得税(ベーシックインカムの先駆的アイデア)、徴兵制の廃止、職業免許制の見直しなど、当時は急進的とされた政策提案が次々に示される。理論書でありながら具体的な政策集としても読める。
【影響と意義】
1970〜80年代の英米経済政策の方向転換を準備し、レーガノミクスやサッチャリズムの理論的基盤となった。フリードマンは1976年にノーベル経済学賞を受賞している。以後の自由市場論・小さな政府論の共通の出発点であり、現代の規制緩和論や教育市場化論にも影響を与え続けている。
【なぜ今読むか】
読みやすい文体で経済的自由の価値を説く論理は明快で、賛否いずれの立場からも読む価値がある。ケインズ派と読み比べると、経済思想の全体像が一気に見えてくる。
さらに深く
【内容のあらまし】
フリードマンは序章で、第二次大戦後の知的気風を批判する。多くの知識人が経済への政府の介入を進歩と同一視するなかで、彼はその逆を主張する。経済的自由は政治的自由の必要条件であり、両者を切り離すことはできない、と。
第一段階で自由の二重構造が論じられる。経済活動を市場で自発的に交換する自由が確保されてはじめて、人々は自分の意見を持ち、政府を批判し、別の生き方を選ぶことが可能になる。なぜなら、生活の糧を一つの権力に依存している者は、その権力に異を唱える勇気を持ちにくいからである。逆に経済が市場を通じて分散していれば、不人気な意見を述べた人でも別の取引先を見つけられる。市場は政治的な多元性の物質的な土台として位置づけられる。
第二段階で政府の役割が小さく定められる。法の支配、契約の履行、私的所有の保護、貨幣供給の管理、外部性への対処、子どもや精神病者など自分の利害を守れない人々への配慮といった限られた領域が、政府の正当な仕事として残される。それを越える介入、たとえば賃金統制、価格統制、業界規制、特定産業への補助金は、市場の調整機能を歪め、結果として政治的自由をも蝕む。
第三段階で具体的な政策提案が次々に示される。一つ目は変動為替相場制で、各国の通貨が市場で価値を決めるほうが、固定相場の歪みより健全だと論じられる。二つ目は教育バウチャー、すなわち税金で公立学校を直接運営するのではなく、保護者にバウチャーを配り、私立を含む学校を選ばせる仕組みである。三つ目は負の所得税で、複雑な福祉制度を一本化し、所得が一定水準以下の人に税還付の形で現金を渡す案が示される。後のベーシックインカム論の先駆である。徴兵制の廃止、職業免許制の縮小、独占禁止政策の見直し、社会保障の民営化なども次々に俎上に載る。
中盤で人種差別への対応が論じられる。フリードマンは差別を是認しないが、差別をなくす最善の道は法的禁止ではなく、市場を通じた自由競争だと主張する。差別を続ける雇用者は、より能力ある別集団の労働力を逃すというコストを負うため、長期的には淘汰される、という議論である。この点は本書のなかでも最も論争を呼ぶ部分である。
結部で、彼は19世紀の自由主義に立ち返ることが20世紀の課題だと述べる。本書はこの呼びかけで閉じられる。
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