文
『文学論』
ぶんがくろん
夏目漱石·近代
漱石がロンドン留学の成果を注ぎ込んだ文学の科学的体系
文学哲学
この著作について
夏目漱石がイギリス留学からの帰国後、東京帝国大学で行った英文学講義をもとに、1907年に公刊した文学理論の大著。漱石自身が「十年の苦心の結果」と序に記した、日本初の体系的な文学論書である。
【内容】
漱石は文学作品が読者に及ぼす印象を「F(focal impression)」と「f(focal emotion)」という独自の記号で分析する。F+fという公式を立て、認識的要素と情緒的要素の結合としての文学を、実験心理学と統計的アプローチを用いて「科学的に」分析しようとする。全5編で、文学における知覚・理解・情緒の構造、集団意識と歴史的変化、イギリス文学の進化の分析が展開される。漱石の小説家としての成熟と並行して書かれた、批評家としての漱石の到達点でもある。
【影響と意義】
日本において西洋の文学理論を単に輸入するのではなく、独自の概念体系で文学を捉え直した最初の試みとして、日本近代文芸批評史の出発点に位置する。のちの小林秀雄、伊藤整、吉本隆明らの批評にも深い影響を残した。
【なぜ今読むか】
難解だが、漱石が小説を書きながら何を考えていたかを知る一次資料として貴重。現代の文体分析・読者反応理論の源流としても読み直せる。
著者
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