弁
『弁道話』
べんどうわ
道元《どうげん》·中世
只管打坐《しかんたざ》の意義を問答体で説いた『正法眼蔵《しょうぼうげんぞう》』巻頭の重要書。
哲学
この著作について
1231年に道元が著した、只管打坐の意義と本証妙修の坐禅観を問答体で説いた重要な著作である。中国宋から帰朝して間もない時期に書かれ、後に『正法眼蔵《しょうぼうげんぞう》』に組み入れられてその巻頭を飾ることになる。岩波文庫『正法眼蔵』所収のほか、講談社学術文庫など複数の版で読むことができる。【内容】坐禅こそが仏祖正伝の正門であることを宣言し、修行と悟りを切り離す立場を退ける。「修証一等」の思想、すなわち修行そのものがすでに悟りの現れであるという独自の見解が、十八の問答の形で展開される。坐禅の功徳、在家と出家を問わぬ普遍性、戒律との関係、念仏や看経との比較、女性も仏法に入る資格を持つことなど、後の道元思想の根幹となる主題がここで提示される。【影響と意義】帰朝間もない道元が、自身の禅を日本社会に向けて公に表明した最初の本格的著作である。曹洞宗の教義の出発点となり、近代以降は和辻哲郎《わつじてつろう》、田辺元、西谷啓治、上田閑照《うえだしずてる》らによって哲学的に読み直され、京都学派の重要な源泉のひとつとなった。【なぜ今読むか】「悟りのために修行する」という目的合理的な発想を反転させ、行為そのものに完結した意味を見出す思考は、効率と成果に追われる現代の生に静かな問いを投げかける。
著者
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