ド
『ドイツ国民に告ぐ』
どいつこくみんにつぐ
ヨハン・ゴットリープ・フィヒテ·近代
フィヒテがナポレオン占領下でドイツの精神的再生を訴えた講演集
哲学
この著作について
ドイツ観念論の哲学者ヨーハン・ゴットリープ・フィヒテが、ナポレオンに占領されたベルリンで、一八〇七年から翌年にかけて行った十四回の連続講演で、近代ドイツ・ナショナリズムの原典的文書。
【内容】
本書は、プロイセンがイエナ・アウエルシュタットの戦いで敗れ、ベルリンがフランス軍に占領されるという最悪の政治的環境のなかで始まった。フィヒテは敗北の原因を軍事力の差ではなく道徳的・精神的退廃に求め、再生の道を教育改革に託す。ペスタロッチの教育論を評価し、ラテン語派生の諸言語とは異なる「生きた言語」としてのドイツ語の優位を説き、「根源民族(ウアフォルク)」としてのドイツ人の使命を論じる。最終講では、学術・教育・軍事にわたる国家再建の構想が示される。
【影響と意義】
本書は十九世紀ドイツ統一運動の思想的支柱となり、プロイセンの教育改革や大学改革(フンボルト改革)に具体的な影響を与えた。一方でナチス時代に濫用された歴史もあり、民族自覚論と暴走の危うさを同時に抱える二面的な古典として、慎重な読解が求められる。
【なぜ今読むか】
国家の危機に哲学者が言葉で応じた歴史的文書として、ナショナリズムがなぜ人を動かし、なぜ暴走の種を宿すのかを内側から観察できる。現代の民族対立や愛国主義の議論を考えるうえで、避けて通れない資料である。