線の長さを比べるだけの問題です。答えは一目で分かります。
ところが、あなたの前に答えた6人全員が、明らかに違う線を選びました。次はあなたの番です。
まずは選んでみてください。
まず、選んでみる
線の長さを比べるだけの簡単な問題です。答えは一目で分かります。ところが、あなたの前に答えた6人全員が、明らかに違う線を選びました。次はあなたの番です。
見たとおりに答えますか。
この問いには答えがあります。ただ、ほとんどの人が同じところでつまずきます。
実際にやった人がいます
心理学者ソロモン・アッシュが1951年に行いました。本人以外は全員サクラで、決められた回でそろって同じ間違いを言います。
約4分の3の人が、少なくとも1回は多数派に合わせました。 全体の回答で見ると、3割強が間違った答えになっています。
一人で答えた対照群では、間違いはほとんどゼロです。問題が難しかったのではありません。
4つの答えは、それぞれ別の哲学に立っている
人柄で決まる。まわりが何と言おうと、自分がどう答えるかは変わらない。多くの人が事前にはこう答え、実際には4分の3が曲げました。 ミルは、世論に合わせよという圧力こそが個性を削ると論じました。この答えは、その個性の側に立っています。
状況で決まる。全員が違うことを言う場では、誰でも自分の目を疑う。アッシュ自身の見立てです。あとの聞き取りで、本当にそう見えたと答えた人もいました。 合わせたのではなく、見え方が変わっていた。
手がかりで決める。答える前に、もう一度よく見て確かめる。もっともな態度ですが、この実験ではあまり効きません。 何度見ても線の長さは変わらないからです。
立場で決める。この場で正解を言い立てる立場ではない。沈黙という第三の道で、実際の会議でいちばんよく選ばれる選択肢でもあります。
一人でも味方がいると、崩れます
この実験でいちばん重要な発見は、そこにあります。
サクラのうち1人だけが正しい答えを言うようにすると、同調率が劇的に下がります。 誤答は3割強から数パーセントまで落ちました。
多数派の人数を増やしても効果はあまり変わりません。効くのは人数ではなく、全員一致かどうかです。
つまり、たった一人の反対者が、他の人を自由にします。 声を上げた人が場を変えるのは、説得したからではなく、全員一致でなくしたからです。
ミルとトクヴィルが心配していたこと
ミルは、多数派の意見が異論を圧殺することを恐れました。法律で禁じるより、言っても無駄だと思わせるほうが、はるかに強く自由を奪うと。
トクヴィルも同じことを、多数の暴政という言葉で書いています。王には抵抗できるが、世論には抵抗の足場がない。
アッシュの実験は、その心配が抽象論ではないことを示しました。線の長さという、争いようのないことですら曲がる。 意見や価値観なら、なおさらです。
いま、この問いが出てくる場所
会議で全員が賛成しているように見えるとき、それが全員の本心かは分かりません。最初に発言した人の意見に、あとの人が寄っていく現象は、実際に測定されています。
だから、順番に意見を言わせる形は危険です。先に無記名で書かせる、少数意見を必ず記録する、反対役を制度として置く。 どれもアッシュの発見への対処です。
そして、いちばん効くのは変わりません。誰か一人が先に言うこと。