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『ユルスナールの靴』
ゆるすなーるのくつ
須賀敦子《すがあつこ》·現代
ユルスナールに自身の旅を重ねた長篇エッセイ
哲学文学エッセイ
この著作について
須賀敦子《すがあつこ》がフランスの作家マルグリット・ユルスナールの足跡を辿りつつ、自身のヨーロッパ体験を織り交ぜて綴った晩年の長篇エッセイである。1996年に河出書房新社から刊行され、1998年に河出文庫に収められた。
【内容】
ユルスナールが少女期を過ごした北フランスの土地、晩年を送ったアメリカのマウント・デザート島など、作家ゆかりの場所を巡る旅の記憶が中心に置かれる。そこに須賀自身のミラノでの結婚生活、夫の早世、カトリック信仰、ダンテ研究の日々が静かに重ねられる。文体は簡潔でありながら奥行きを湛え、文学と人生が分かちがたく結びつく様を描き出す。
【影響と意義】
日本のエッセイ文学に新しい質感をもたらした須賀の代表作の一つである。同時にユルスナール『ハドリアヌス帝の回想』読解の手引きとしても、またダンテ『神曲』への入口としても読まれてきた。学術論文ではない、文学による文学への応答の好例である。
【なぜ今読むか】
誰かの生を辿ることが自分の生を映し直す行為になる、という読書のあり方を体現する一冊だ。喪失や老いを抱えながら世界に向き合う姿勢を、静かな散文を通じて受け取ることができる。
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