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第二次世界大戦回顧録

だいにじ せかいたいせん かいころく

チャーチル·現代

チャーチルの戦時回顧録

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哲学

この著作について

ウィンストン・チャーチルがイギリス首相として第二次世界大戦を指導した経験を、戦後数年をかけて書き上げた全六巻の大著であり、ノーベル文学賞の主たる対象となった歴史文学。

【内容】

第一巻『胎動する戦雲』は、ヴェルサイユ条約の瑕疵とナチス・ドイツの台頭を冷徹に辿る。続く『最良の時』ではダンケルク撤退とバトル・オブ・ブリテンが、『大同盟』では独ソ戦の開始と日米参戦・三国同盟の形成が、『運命のちょうつがい』ではスターリングラード・北アフリカ上陸作戦・テヘラン会談が描かれる。『包囲網を縮める』ではノルマンディー上陸作戦とヤルタ会談、『凱旋と悲劇』ではドイツ降伏、ポツダム会談、総選挙での敗北までが扱われる。当時の電文、議事録、国王や大統領との往復書簡が豊富に組み込まれ、公文書と一人称の語りが巧みに織り合わされている。

【影響と意義】

二十世紀最大の戦争を、指揮する側の視点から時系列に沿って再構成した一次資料として、歴史学・国際政治学の基本文献であり続けている。「大戦略」という概念を一般読者に伝えた文体の力により、戦後の指導者論や危機管理の教材としても広く参照された。

【なぜ今読むか】

決断の連続にさらされる現代のリーダーや当事者にとって、情報の不確かさと政治の制約のなかでどう選択するかを具体的に追える稀有な記録である。歴史を人物の判断という解像度で読むための道しるべになる。

さらに深く

【内容のあらまし】

全六巻の回顧録は、それぞれが独立した書物として読めるよう構成されている。第一巻「胎動する戦雲」では、第一次世界大戦の終結とヴェルサイユ条約の問題点から物語が起こされる。チャーチルは、賠償金の重荷とドイツ国内の屈辱感が、その後のナチス台頭を準備したと冷静に分析する。続いて、軍縮ムードのなかで再軍備の警告を発し続けながら長く政治の中心から外れていた一九三〇年代の自分自身の活動が、議会演説や日記の引用とともに描かれる。

第二巻「最良の時」は、一九四〇年五月、首相就任の場面から始まる。「私が捧げられるのは血と労苦と涙と汗以外にない」という有名な就任演説、ダンケルクからの三十数万人の脱出作戦、フランス降伏後にイギリスが孤立して戦う決意を固める日々が、緻密な公文書とともに再現される。バトル・オブ・ブリテン、夜間爆撃下のロンドン、戦時内閣の編成、そして自分自身の眠れぬ夜々が、一人称の語りで結びつけられる。

第三巻「大同盟」では、独ソ戦の開始、真珠湾攻撃と日米開戦、米英ソ三国同盟の形成までが扱われる。ローズヴェルトとの大西洋会談、スターリンとの困難な外交、北アフリカでのモントゴメリーによるエル・アラメインの勝利が描かれる。第四巻「運命のちょうつがい」ではトーチ作戦、シチリア上陸、イタリア降伏、テヘラン会談が連なり、戦争の重心が連合国側に確実に傾いていく。

第五巻「包囲網を縮める」ではノルマンディー上陸作戦の準備から実行、フランス解放、ヤルタ会談での三巨頭の駆け引き、東欧をめぐるソ連との緊張が描かれる。第六巻「凱旋と悲劇」では、ドイツ降伏、ポツダム会談、原子爆弾の使用と日本の降伏、そして総選挙でのチャーチル自身の敗北までが語られる。電文・議事録・国王宛の私信が大量に引用されており、戦争を指揮する者の判断材料と心理が並行して示されているのが特徴である。指導者がどんな限られた情報のなかで、どんな圧力に晒されながら決断を下していくか、その手ざわりまでもが追体験できる稀有な歴史文学である。

著者

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