新
『新生』
しんせい
ダンテ·中世
ダンテの初期詩集
哲学
この著作について
若き日のダンテ・アリギエーリがベアトリーチェへの愛を軸にまとめた散文と詩の混成集で、『神曲』の遠い前奏曲として書かれた抒情的な告白の書。
【内容】
九歳で初めてベアトリーチェを見初めた体験の記述から始まり、十八歳での再会、挨拶を交わした日の忘我、彼女の若くしての死までが、抒情詩三十一篇と、それを受けた散文の注釈とを交互に配した構成で綴られる。ダンテは俗世の愛情詩の作法を保ちつつ、ベアトリーチェを感覚の対象から徐々に「魂を救う導き手」として描き直していく。終盤では、天に召された彼女を思う幻視が描かれ、「これまで他の女性について誰も書いたことがないような仕方で彼女について書こう」という決意が表明される。この約束は後に『神曲』で果たされることになる。
【影響と意義】
イタリア俗語(トスカナ方言)による高度な文学的試みとして、ペトラルカ、ボッカッチョに連なるイタリア近代文学の出発点となった。十三世紀シチリア派以来の宮廷風恋愛詩を、精神的救済の物語へと転換させた点で、ヨーロッパ愛の詩の流れを大きく変えた。
【なぜ今読むか】
片思いや早すぎる別れの悲しみを「自分の魂の物語」として綴り直すという試みは、今もSNSやエッセーで繰り返されている営みに他ならない。自分の感情を言葉の秩序のなかに置き直そうとする衝動の、もっとも古く気高い実例である。
著者
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