実
『実力も運のうち 能力主義は正義か?』
じつりょくもうんのうち
マイケル・サンデル·現代
サンデルが能力主義の暴政を批判した話題作
哲学政治哲学倫理学
この著作について
ハーバード大学の政治哲学者マイケル・サンデルが2020年に刊行した著作(原題 The Tyranny of Merit)の邦訳である。鬼澤忍訳により早川書房から2021年に刊行された。能力主義(メリトクラシー)が現代社会にもたらした分断を批判し、共通善の政治の再生を訴える時評的著作である。
【内容】
サンデルは、能力主義が一見公正なルールに見えながら、実は勝者には傲慢を、敗者には屈辱を生むという根本的な歪みを指摘する。学歴と所得の連結、エリートと労働者階級の文化的断絶、グローバリゼーションが生んだ「成功者の物語」が、近年のポピュリズム台頭の温床となったと分析する。トランプ現象・ブレグジット・各国の右派ポピュリズム伸長を、能力主義への怨嗟が爆発した結果として読み解く視座が新鮮である。代替案として、サンデルは労働の尊厳の回復、機会の平等から条件の平等へ、共通善志向の政治への転回を提唱する。
【影響と意義】
世界的ベストセラーとなり、教育・労働・政治をめぐる議論に大きな波紋を投じた。日本でも教育格差・新自由主義批判の文脈で広く参照されている。
【なぜ今読むか】
受験競争から職場評価まで「実力で決まる」言説が浸透した社会への根本的な問い直しを促す一冊である。