思
『思考と言語』
しこうとげんご
レフ・ヴィゴツキー·現代
社会的相互作用を通じて思考が形成される過程を描いた発達心理学の古典
心理教育
この著作について
レフ・ヴィゴツキー(Lev Vygotsky)が1934年、肺結核で没する直前に刊行した発達心理学の主著(原題『Мышление и речь』、英訳『Thought and Language』)。ソヴィエト連邦における心理学の黄金期を代表する古典であり、二十世紀の発達心理学・教育心理学の基礎文献として世界的に読まれている。
【内容】
本書の中心命題は、思考と言語はそれぞれ異なる発生的根をもち、二歳前後で交差して「言語的思考」を形成するというものである。ヴィゴツキーはピアジェの「自己中心的ことば」を批判的に再解釈し、独り言は社会的ことばから内言(内的発話)への移行過程であるとした。内言は音声を欠いた高度に圧縮された思考の形式であり、思考それ自体の構造を規定する。さらに有名な「発達の最近接領域(ZPD)」概念が導入され、子どもは独力でできることの範囲よりも、他者との相互作用の中でできる範囲に、次の発達の芽がすでに育っているとされる。概念形成の段階説、学校教育と科学的概念、内的発話の統語的特殊性など、各章がそのまま独立した研究テーマを提示する。
【影響と意義】
ジェローム・ブルーナー、マイケル・コール、バーバラ・ロゴフらを経て、社会的構成主義、文化歴史的活動理論、状況的学習論、協働学習、読み書き教育に至る広大な領域を形成した。近年はAI対話システムや人間と機械の協働学習の理論的背景としても再読されている。
【なぜ今読むか】
AIと対話しながら学ぶ時代に、他者との対話が思考を内面化するというヴィゴツキーの洞察は、人と機械の関係を設計するうえで避けて通れない基礎となる。