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統

『統辞構造論』

とうじこうぞうろん

現代

生成文法を提唱し言語学に革命をもたらしたチョムスキー出世作

哲学科学

この著作について

ノーム・チョムスキーが1957年に公刊した言語学の小著。生成文法理論を初めて体系的に提示し、20世紀後半の言語学・認知科学を根本から塗り替えた、いわゆる「チョムスキー革命」の起点となるテクストである。

【内容】

全9章。行動主義心理学に依拠するブルームフィールド学派の構造言語学を、内的心理過程を扱えない点で不十分と批判する。言語の本質は有限の規則から無限の文を生成する能力(生成能力)にあり、この能力は有限状態文法では捉えきれず、句構造文法さらに変形文法が必要だと数学的厳密さで論証する。有名な例文「Colorless green ideas sleep furiously」が、文法的に正しくも意味的にナンセンスな文の例として提示される。

【影響と意義】

スキナー『言語行動』への書評(1959)と合わせ、認知革命の起爆剤となった。認知科学・AI・心の哲学・生得論争における言語研究の枠組みを一変させ、以後60年以上にわたり言語学の中心論争の震源地であり続けている。

【なぜ今読むか】

大規模言語モデルが「文法なしの学習」で言語を扱う現代、「生得的言語能力」論との緊張を理解する原点。

どの訳で読むか

いま版元に在庫があるのは、岩波文庫の福井直樹・辻子美保子訳である。新訳で、チョムスキー自身の序論と訳者解説も併録され、電子書籍にも対応している(2026年10月時点)。1963年の勇康雄訳は、国立国会図書館サーチに1977年の刷の記録がある古い訳で、読み比べたいときは図書館や古書で探すことになる。

  • 福井直樹・辻子美保子訳岩波書店・岩波文庫、2014年

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    書名は『統辞構造論』で、チョムスキー自身が書いた「言語理論の論理構造」序論を併録する。版元は1957年刊の原著の完全な新訳と紹介し、CiNii Booksの注記は原著第2版(2002年)の全訳とする。約100頁の訳者解説とあとがき、人名索引、事項索引がつき、文庫判で434頁。変形は「変換」と訳される。

  • 勇康雄訳研究社出版、1963年

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    書名は「文法の構造」で、118頁。岩波文庫版の版元紹介が、旧訳としてこの訳に触れている。国立国会図書館サーチには、1977年の刷の記録もある。

さらに深く

【内容のあらまし】

本書のもとになったのは、著者がMITの学部生向けの入門講義のために用意したノートである。出版社ムートンの叢書の編者がこれに目をとめ、著者は叢書に収まるよう120ページ以内の原稿にまとめた。書名も、売れ行きを考えた編者の求めで改められた。

第1章は、統辞論の目標を、分析する言語の文を産出する装置としての文法の構成に置く。「文法の独立性」と題された第2章は、言語を、有限でも無限でもよい文の集合で、各文は長さが有限で、有限個の要素から組み立てられたものと定める。文法的かどうかは、コーパスに含まれるかどうかとも、意味をなすかどうかとも、統計的に起こりやすいかどうかとも別の事柄だと論じる。ここで二つの文が並ぶ。「Colorless green ideas sleep furiously.」と、同じ語を逆の順に並べた文である。どちらも英語の談話に現れたことはなさそうで、統計のモデルなら同じ理由で退けるはずなのに、前者は無意味でも文法的で、後者はそうではない。

第3章は、言語をマルコフ過程として扱う有限状態文法を検討し、英語は有限状態言語ではないと論じる。ifとthen、eitherとorのような対応は、間に文をいくらでも入れ子にできるからである。第4章は、直接構成素分析にもとづく句構造文法を取り上げる。第5章は、等位接続、助動詞句、受動を例に、句構造規則では書けない規則があると示し、それを変形(岩波文庫版は「変換」)と呼ぶ。文法は、句構造規則、変形規則、形態音素規則の三つからなる。義務的な変形だけを施して得られる単純な能動の平叙文が言語の「核」となり、受動や否定、疑問の文は、任意の変形を決まった順に当てて作られる。

第6章は文法の正当化を論じ、有限のコーパスを観察に、文法規則を仮説的な構成物で書かれた法則になぞらえる。理論に求めうるのは、コーパスから文法を機械的に導く発見手続きでも、文法の当否を判定する決定手続きでもなく、二つの文法の優劣を決める評価手続きまでだとする。第7章は否定、yes-no疑問文、wh疑問文、受動などを変形で導き、第8章は、句構造のレベルでは同じ形なのに二通りに理解される文を、変形のレベルで説き明かす。統辞論と意味論の関係を扱う第9章は、意味と文法形式の対応は不完全で不正確であり、意味を文法記述の土台にしてもほとんど役に立たないと結論する。第10章の要約のあとには、表記と術語の付録と、英語の句構造規則と変形規則の例を示す付録が続く。

同じ年に、MITの同僚リーズが学術誌「Language」に本書の長く好意的な書評を寄せ、言語学者の目にとまるきっかけになった。

著者

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