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社

『社会学的方法の規準』

しゃかいがくてきほうほうのきじゅん

エミール・デュルケム(宮島喬訳)·近代

社会学を独立科学として確立した方法論の古典

哲学

この著作について

エミール・デュルケムが1895年に発表した、社会学方法論の古典である。岩波文庫白214-3として宮島喬訳が1978年に刊行された。原題はLes règles de la méthode sociologique。

【内容】

デュルケムは本書で、社会学を独立した科学として確立するための方法論的規準を体系化した。中核となるのは「社会的事実をもののように観察する」という命題である。社会的事実とは個人外在的でありながら個人を拘束する現象であり、自殺率、結婚率、宗教儀礼、法規範などがそれにあたる。アプリオリな観念や常識的価値判断、心理還元主義を排除し、事実から規則性を抽出する手続きを説いた本書は、コントの実証主義精神を継承しつつ、それを具体的な研究方法へと精緻化した。正常と病理の区別、原因の探究、比較法の適用といった主題が章を追って展開される。

【影響と意義】

本書は社会学のみならず、文化人類学、政治学、教育学にも影響を及ぼし、20世紀社会科学の方法論的基盤の一つとなった。日本でも社会調査論の必読書として位置づけられている。

【なぜ今読むか】

統計と質的調査の使い分け、価値判断と科学的記述の区別といった現代的課題は、本書の出発点に立ち返ることで見通しがよくなる。

どの訳で読むか

1978年から刷を重ねてきた文庫で読むなら岩波文庫の宮島訳、新しい訳で電子版も選びたいなら2018年の講談社学術文庫の菊谷訳になる。著者名は岩波文庫ではデュルケム、講談社学術文庫ではデュルケームと表記されるので、探すときは両方で検索するとよい。

  • 宮島喬訳岩波書店・岩波文庫、1978年

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    文庫で310頁。CiNiiの書誌には1990年の第12刷についての注記があり、刷を重ねてきたことがわかる。版元の紹介文は、事実を「もののように」研究することを基本の規準として説いた本だとし、ヴェーバーの「価値判断からの自由」の命題とならんで社会学の認識態度に大きな影響を与えたと書く。

  • 菊谷和宏訳講談社・講談社学術文庫、2018年

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    2018年に出た新しい訳で、電子版もある。CiNiiの書誌によれば、底本はフランス大学出版局(PUF)の叢書「Quadrige」の第14版(2013年)。第一版序文と第二版序文、序論、6章、結論を収め、巻末に訳者解説がつく。版元の訳者紹介では、訳者は一橋大学大学院社会学研究科教授で、専門は社会学・社会学史、社会哲学・社会思想史とされる。

さらに深く

【内容のあらまし】

本書は二つの序文と序論、6章と結論からなる。第二版の序文は、最も多く反論を招いた命題の一つが、社会的事実は物として扱うべきだというものだったと振り返る。社会的事実は物質ではないが物質と同じ資格で物であり、物とは、頭の中の分析では捉えられず、観察と実験で外から知るほかない対象だと言い直す。序論は、社会学者が方法の定義にあまり関心を払ってこなかったと指摘し、自分の実践から得た方法を『社会分業論』から取り出してまとめると述べる。

第1章は、飲む、眠る、考えるといった誰もがすることまで社会的と呼べば、社会学の対象がなくなると言う。兄や夫や市民としての務めは、私の外で法や慣習に定められた義務である。こうした行動や思考や感覚の様式のうち、個人の外にあって個人を拘束する力をもつものを、社会的事実と呼ぶ。

第2章は冒頭に、社会的事実を物として考察せよという、第一にして最も基本的な規準を置く。続いて、学問以前の俗な観念を、ベーコンにならって予断と呼び、すべて退けよと求める。対象は、外から見える共通の特徴でくくって定める。たとえば、刑罰という反応を引き起こす行為をすべて犯罪と呼ぶ。

第3章は正常と病理の区別を扱い、犯罪を適用例にする。犯罪はどの型の社会にも見られ、犯罪のない社会は不可能だから、正常だという。聖人ばかりの修道院でも、裁き罰する力をもてば、小さな過ちを犯罪として扱うだろう。アテナイの法ではソクラテスは罪人だったが、その罪とされた思考の独立は、新しい道徳と信仰を準備した。ただし正常なのは犯罪があること自体で、各型の社会で一定の水準を超えれば病的だとする。注では、犯罪者を寄生物のように語った『社会分業論』の誤りを認め、正常だからといって憎まなくてよいことにはならないと添える。

第4章は、内部により単純な集団を含まないホルドを最も単純な社会とし、その組み合わさる度合いで社会を分類する。第5章は、原因と機能を分けて探すよう求め、社会的事実の原因は先行する社会的事実の中に探して、個人の意識の状態には探さないと定める。第6章は、実験のできない社会学では比較が唯一の証明の方法だとし、二つの現象がそろって変化する度合いを追う方法を推す。例に、自殺の傾向と学ぶ傾向が並んで変わることを挙げ、両者の共通の原因を宗教的な伝統の弱まりに求める。

結論は方法の特徴を三つ挙げる。第一に、どの哲学からも、世間でいう意味での個人主義、共産主義、社会主義からも独立している。第二に、事実を物として扱う客観的な方法である。第三に、もっぱら社会学的である。社会学はどの学問の付属物でもない独立した学問だと結ぶ。

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