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復

『復活』

ふっかつ

近代

裁判と流刑を通じて良心の再生を描いた晩年の長編

文学宗教

この著作について

レフ・トルストイが1899年に公刊した最後の長編小説。トルストイが唱えた社会批判と宗教思想を一つの物語に結晶させた晩年の代表作で、刊行当時から教会・国家の双方から激しい反発を受けた。

【内容】

陪審員として法廷に座った貴族ネフリュードフは、被告席に、若い頃に自分が誘惑して捨てた娘カチューシャを発見する。彼女はいま娼婦となり、身に覚えのない殺人罪に問われている。自らの過去の罪を認めたネフリュードフは、誤審による彼女の流刑に同行してシベリアへ赴き、牢獄と流刑地の現実を目の当たりにしながら魂の再生を試みる。私有財産の放棄、家産の農民への分与、国家と司法への根底的な不信が、主人公の精神的遍歴と重ね合わされる。

【影響と意義】

本作をきっかけにトルストイはロシア正教会から破門され、その宗教思想は初期ガンディー、ロマン・ロラン、日本の武者小路実篤ら白樺派の文学者に繰り返し読まれた。20世紀初頭の非暴力主義・原始キリスト教運動の理論的背景となった。

【なぜ今読むか】

司法と刑罰の正義、富と階級の罪責感、過去をどう償うかといった主題は、現代の修復的司法や償いの倫理にそのまま接続する。

どの訳で読むか

新刊の文庫で手に入る訳には、新潮文庫の木村浩訳と岩波文庫の藤沼貴訳があり、どちらも上下2冊。1980年から版を重ねてきた文庫なら木村訳、2014年に出た新しい訳で、訳者によるトルストイの生涯の解説も読みたいなら藤沼訳が目安になる。

  • 木村浩訳新潮社・新潮文庫、1980年(上下2冊)

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    2004年に改版された。国立国会図書館の書誌によれば、翻訳の底本は1933年にソビエトの国立文芸出版所が出したトルストイ大全集の第33巻。版元の紹介では、訳者は東京外国語大学ロシア語科の出身で、ソルジェニーツィンやドストエフスキーの翻訳もある。

  • 藤沼貴訳岩波書店・岩波文庫、2014年(上下2冊)

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    上巻に第1編と第2編の第7章まで、下巻にその続きと第3編を収める。上巻には訳者の「トルストイの生涯」、下巻には訳者の解説と論考「トルストイの最後の長編小説『復活』」、阿部昇吉のあとがきがつく。版元のサイトでは上下とも在庫ありと表示され、電子書籍もある。

さらに深く

【内容のあらまし】

全3編、第1編59章、第2編42章、第3編28章からなる。巻頭には福音書から四つの言葉が掲げられ、兄弟を七の七十倍まで赦せというイエスの答えや、兄弟の目のおが屑を見て自分の目の丸太に気づかないのかという問いが並ぶ。

物語は春の朝に始まる。何十万もの人が草を削り、木を切り、煤煙で空気を汚しても、町にも春は来る。だが監獄の事務所で大切とされるのは番号つきの一枚の通達で、それに従って4月28日、マースロワが法廷へ連れ出される。彼女の半生は、牛小屋での誕生から始まる。地主の老姉妹に引き取られて半ば小間使い、半ばお嬢さんとして育ち、姉妹の甥の公爵が100ルーブル札を残して去ってから5か月後、身ごもったと知る。子は養育院へ送られてすぐ死に、勤め口を転々とした末に娼家で7年を過ごした。

陪審員席のネフリュードフの前で、宿屋「マヴリタニア」で商人が毒死した事件の審理が進む。彼女は眠り薬だと言われた粉を酒に入れたことは認める。審理の合間に回想が差しはさまれる。土地所有についての論文を書いていた学生時代の夏、鬼ごっこでライラックの茂みに隠れて交わした最初の口づけ。連隊へ向かう途中、叔母の家で迎えた復活祭の夜、白い服に赤いリボンのカチューシャ。評議で陪審は強奪の意図を否定して慈悲を添えるが、殺意はなかったという一句を誰も思いつかず、ネフリュードフも気づかない。有罪は殺意ある毒殺の意味となり、4年の懲役でシベリア送りが決まって、彼女は無実だと叫んで泣き崩れる。

裁判の日の晩、彼は「魂の大掃除」にとりかかり、赦しを乞い、必要なら結婚もすると決める。日曜の監獄の礼拝が、儀式の所作を外からなぞるように描かれたあと、彼は面会に訪れる。金網越しの怒号の中で詫びても、彼女は取り合わず、弁護士の費用の話から10ルーブルを無心する。次の面会で結婚を申し出ると、酒の匂いをさせた彼女は、この世で私を楽しんで、あの世では私を使って救われたいのかと突き放す。

第2編で彼は領地をめぐり、地代を農民自身の税と共同の用に充てる形で、土地から利益を得るのをやめようとし、叔母たちの村では子どもの最期を尋ねる。ペテルブルクでは役人や貴族を訪ね歩くが、元老院は判決を変えず、皇帝への請願だけが残る。出発の前夜に読み返した日記には、自分の目の丸太に早く気づけたらどれほど優しくなれるか、と書いてある。7月の酷暑の日、駅まで歩かされる囚人たちは日射病で次々に倒れる。

第3編、ペルミから彼女は政治犯たちと旅を続けることを許され、新しい知り合いに感化されていく。シベリアの奥で二人がそれぞれどの道を選ぶのかは、最後の数章まで明かされない。

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