ピ
『ピュティア祝勝歌』
ぴゅてぃあしゅくしょうか
ピンダロス·古代
ピュティア競技の勝者をたたえたピンダロスの祝勝歌12篇。第2歌の一句をニーチェが組み替えて用いた
文学詩古代ギリシア
この著作について
古代ギリシアの合唱抒情詩人ピンダロスが、デルポイで開かれたピュティア競技の勝者のために作った祝勝歌12篇。四大競技ごとに編まれた競技祝勝歌集4巻のうちの1巻にあたる。
【内容】
ピュティア競技は、アポロンの聖域デルポイで4年ごとに開かれた祭典である。各歌は戦車競走やレスリング、笛の競技などの勝者をたたえ、その一族や都市、神話を織り込んで組み立てられる。最も古い第10歌は前498年、最も新しい第8歌は前446年の作と推定される。第1歌から第3歌はシチリアの僭主ヒエロンのための歌で、第2歌は、神々のもとで得た幸福に耐えられなかったイクシオンが翼ある車輪の上で回り続ける神話を語り、のちに、学んで、あなたであるところのものになれ、と歌う。第8歌には、人は影の夢、だがゼウスの与える輝きが来れば人の生は穏やかになる、という句がある。
【影響と意義】
四大競技の祝勝歌集は、古典期以前のギリシア抒情詩としては例外的に、ほぼ完全な形で伝わった。大胆な比喩と、同じものを二度と使わない複雑な韻律で知られ、難解とされる。ローマのホラティウスやクインティリアヌスに絶賛され、近代にはヘルダーリンやドライデンら多くの詩人に愛された。第2歌の一句は、ニーチェが『悦ばしき知識』で組み替えて用い、ハイデガーも『存在と時間』で取り上げている。
【なぜ今読むか】
競技の勝利を一族や都市の歴史、神々の物語と結びつけて祝う営みは、勝敗の速報が流れては消える今とは別の時間の感覚を持つ。勝者をたたえながら、人は影の夢だと歌う詩人のまなざしは、成功と人の生のはかなさを同時に見つめる手がかりになる。