政
『政治神学』
せいじ しんがく
カール・シュミット·現代
シュミットの主権論
哲学
この著作について
ワイマール共和国の危機期にカール・シュミットが発表した短い理論的パンフレットで、二十世紀で最も論争的な政治哲学書の一つ。
【内容】
冒頭の一文「主権者とは例外状態について決定する者である」が全体の主題を凝縮している。法秩序は平時の規範を定めるが、革命・内乱・緊急事態といった例外状態では、法を一時停止してでも秩序を回復する決断者が必要となる。本書は、この決断を下す者こそ真の主権者であり、法の外にいてなお法を可能にする存在だと論じる。続く章では、近代政治における諸概念(主権、全能の立法者、代表)が中世・近世神学の諸概念(神、創造、奇跡)の世俗化版であるという「政治神学テーゼ」が示される。自由主義的な議論の政治を、真の決断を回避する議論体系として批判する姿勢が貫かれる。
【影響と意義】
シュミットが後にナチスに接近したため、本書は長く問題的著作として読まれてきたが、冷戦後、アガンベン『ホモ・サケル』、ムフ、ラクラウらによって再び正面から論じられるようになった。「例外状態」「決断主義」『政治神学』という語彙は、緊急事態宣言・対テロ政策・主権論をめぐる現代の議論の共通語となっている。
【なぜ今読むか】
感染症・戦争・気候危機など、例外状態の宣言が世界各地で繰り返される時代に、「誰がどの基準で平時と非常時を決めるのか」という問いは急を要する。本書は危険な書物だが、その危険性を自覚的に読み抜くことが、現代の政治を点検するうえで必要になっている。