人
『人間の尊厳について』
にんげんの そんげんについて
ピコ・デラ・ミランドラ·近代
ルネサンス人文主義の宣言書
哲学
この著作について
ルネサンス最盛期のイタリア人文主義者ピコ・デラ・ミランドラが二十代で草した演説草稿で、近代ヒューマニズムの出発点に位置する短い宣言書。
【内容】
ピコはローマで開催予定だった九百の命題をめぐる公開討論の開会演説として本書を書いた。冒頭で創造主は、天使・動物・植物にはそれぞれ固有の場所と本性を与えたが、人間にだけは定まった本性を与えず、「自由意志によって獣にも天使にもなりうる可塑的な存在」として創造したと語られる。人間は「自ら望む姿へ自らを彫琢する彫刻家」であり、この自己形成の自由こそが尊厳の根拠である。短い本文には、ヘブライ神秘主義カバラ、イスラム哲学、プラトン、アリストテレス、キリスト教神学のすべてを総動員してこの主張を支える、若きピコの知的野心が濃密に結晶している。
【影響と意義】
中世的な存在の階梯のなかに固定された人間像を覆し、自己決定と教育可能性を持つ主体としての近代的人間像を先取りした点で、ルネサンス・ヒューマニズムの代表作として位置づけられる。カッシーラーの古典的研究以来、人文主義宣言として繰り返し読み直され、人権思想・教育思想・実存主義の遠い源流として評価されている。
【なぜ今読むか】
「自分は生まれつきこうだ」と諦めがちな気分のなかに、自己を作り変える自由を語る古い声が差し込まれる。短く読める一篇だが、自分の可能性を信じる根拠を、歴史の奥底から汲み直すことができる。