オ
『オデュッセウスの世界』
おでゅっせうすのせかい
M.I.フィンリー·現代
ホメロスから古代ギリシア社会を読み解く名著
哲学歴史古典学
この著作について
英国の古代史家M.I.フィンリーが、社会学・人類学の知見を駆使してホメロスの叙事詩から古代ギリシア社会の構造を解明した古典的研究書である。原題『The World of Odysseus』、日本語訳は下田立行による岩波文庫青464-1。
【内容】
オイコス(家産世帯)を社会の単位とし、贈与と返礼が結ぶ人間関係、名誉と恥の倫理、王侯と従士団の絆を、ホメロス作品を一次資料として再構成する。フィンリーは叙事詩を文学作品としてだけでなく、暗黒時代後期の社会を映す歴史史料として読み直し、青銅器文明崩壊後の社会像を浮かび上がらせた。経済人類学者カール・ポランニーの影響を受け、市場経済以前の交換様式を鮮やかに描く。
【影響と意義】
初版は1954年、改訂版が1977年に出された本書は、英米圏の古代史教科書として古典的地位を保ってきた。文学研究と歴史研究、社会人類学を架橋した方法論は、その後のホメロス研究全体の枠組みを規定した。
【なぜ今読むか】
贈与と名誉に動かされる社会のあり方は、市場と貨幣に慣れきった現代人の想像力を揺さぶる。古代を学ぶことが現代を相対化する作業になる、その手応えを感じられる一冊である。
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