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『ナショナリズムの生命力』
なしょなりずむのせいめいりょく
アンソニー・スミス·現代
エスノ・シンボリズムの立場からゲルナーの近代主義的ナショナリズム論を批判した著作
政治
この著作について
イギリスの社会学者アンソニー・D・スミスが、師ゲルナーの近代主義的ナショナリズム論に批判的応答を投げかけ、エスノ・シンボリズムと呼ばれる立場を体系化した著作。
【内容】
スミスは、ナショナリズムを単に産業社会の機能的産物と見る近代主義を退けると同時に、民族や国民を時代を超えた本質と見る原初主義にも与しない。その代わりに、ネイションの「素材」となる神話、記憶、象徴、言語、儀礼、共通の祖先像といったエスニックな資源は、長い歴史を経て蓄積されてきたものであり、近代のナショナリズムはこれらを再編することで大衆的感情を調達する、と論じる。世俗化、書物、軍事動員、学校教育といった近代の諸制度が、古層のエスニックな記憶をどう組み替えて「国民」を作り出してきたかが具体的な事例に即して分析される。
【影響と意義】
近代主義と原初主義の論争に第三の道を示した本書は、ナショナリズム研究の中核文献となり、バルカン、中東、東アジアなど複雑な民族問題を抱える地域の研究でも頻繁に参照されている。歴史学・比較政治学・社会人類学における現代的ナショナリズム論の共通語彙を形づくった。
【なぜ今読むか】
ナショナリズムの高揚や再浮上を目撃するたび、「いつまでも変わらぬ民族感情なのか、新しい発明なのか」という二者択一に陥りがちである。本書はその中間の粘り強い読み方を教えてくれる。