明
『明代思想研究』
みんだいしそうけんきゅう
荒木見悟·現代
陽明学を中心に明代の思想を体系的に解明した戦後中国思想史研究の金字塔
哲学歴史
この著作について
九州大学教授で中国思想史・仏教思想史を専門とした荒木見悟(1917〜2017)が1972年に創文社から刊行した、明代思想史研究の代表作。
【内容】
本書は陽明学を中心軸に据えながら、朱子学との緊張関係、湛若水との交渉、王門諸派(左派・右派)の分岐、東林学派の批判運動、李卓吾の異端思想、晚明儒仏会通、清初考証学への転換までを、第一次史料の徹底的読解に基づいて論じる。とくに陽明学を単なる「内面化した道徳論」としてではなく、宋代以来の仏教(華厳・禅)との交流を背景に持つ思想的葛藤の場として描き直す視点が独自である。日本における陽明学受容(中江藤樹《なかえとうじゅ》・熊沢蕃山・大塩平八郎)の前提となる中国側の文脈を理解する基礎文献としても重要である。
【影響と意義】
本書は『仏教と陽明学』『中国心学の鼓動』とともに、戦後日本の中国思想史研究を国際的な水準に押し上げた荒木見悟の代表業績の一つである。日本・中国・韓国・北米の研究者によって繰り返し参照される、明代思想研究の事実上の標準書となっている。
【なぜ今読むか】
東アジアの思想伝統を「儒教」と単純化する見方を超え、その内部の緊張と多様性を深く理解するための必読書である。