記
『記憶・歴史・忘却』
きおくれきしぼうきゃく
ポール・リクール·現代
個人の記憶から歴史叙述までを貫く忘却の倫理を問うたリクール晩年の大著
哲学歴史
この著作について
フランスの哲学者ポール・リクールが2000年、87歳の時に公刊した記念碑的著作。現象学・歴史学・精神分析を総合し、記憶と忘却の関係を哲学的・倫理的に徹底的に考察した、リクール生涯の総決算である。
【内容】
三部構成で、第一部は記憶の現象学(想起・想像・証言)、第二部は歴史の認識論(史料批判・説明・叙述)、第三部は忘却と赦しの条件を論じる。記憶は単なる過去の保存ではなく、語り直しと忘却を伴う実践であり、歴史もまた「不幸な記憶」の再構成を通じて他者への責任を引き受ける作業だとされる。アウシュヴィッツの証言不可能性、和解・赦し・集合的記憶の政治といった、現代ヨーロッパの焦眉の問題が哲学的深みで論じられる。
【影響と意義】
歴史哲学、記憶研究(メモリー・スタディーズ)、証言の哲学、トラウマ論において必読文献となり、アスマン夫妻の文化記憶論ハーバーマスの公共圏論とも対話しながら、21世紀の人文学に広く波及している。
【なぜ今読むか】
戦争犯罪・植民地主義・家族史をめぐる記憶の政治が激しさを増す現代、和解と忘却の倫理を考える不可欠の指針。
著者
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