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回

『回想録』

かいそうろく

近代

ビスマルクの政治的回顧録

哲学

この著作について

鉄血宰相オットー・フォン・ビスマルクが宰相を辞した後、フリードリヒスルーの館で口述と推敲を重ねて残した全三巻の回顧録。

【内容】

学校を終えた青年時代、議会活動の始まり、プロイセン国王の信任を得るまでの経緯から話が起こされる。続く章ではデンマーク戦争、普墺戦争、普仏戦争という三つの戦争と、ヴェルサイユ宮殿でのドイツ帝国成立までの外交の舞台裏が克明に描かれる。列強間の均衡を維持するための「再保障条約」など複雑な同盟戦略、議会・皇帝・世論との格闘、文化闘争や社会主義者鎮圧法をめぐる国内政治が、本人の主観を交えて語られる。後半では若い皇帝ヴィルヘルム二世との対立と辞任が、強い感情を伴って記される。

【影響と意義】

近代政治外交の内実を当事者の視点から描いた一次資料として、政治史・外交史研究の基本文献であり続けている。権力政治のリアリズムを語った書物でもあり、ビスマルクの外交はのちにキッシンジャーも論じている。

【なぜ今読むか】

多極化が進み同盟関係が再構築される現代、列強間で均衡を保つための冷徹な計算と人間関係の機微を同時に見渡す回顧録として読む価値は大きい。政治的リアリズムの古典的教科書である。

さらに深く

【内容のあらまし】

本書は宰相辞任後のビスマルクが、フリードリヒスルーの居館で側近に口述しながら推敲を重ねた回顧録である。第三巻の冒頭には、息子たちと孫たちに宛てて、過去の理解と未来への教えのためにと記した献辞がある。ただ、実際には自分の政治を正当化する弁明の書という性格が強く、政敵への攻撃も容赦がない。前半では、一八三二年に学校を終えたところから筆が起こされ、ゲッティンゲンとベルリンでの学生生活、若き日の議会演説、フランクフルトのドイツ連邦議会への赴任、ペテルブルクとパリでの大使経験が人間観察を交えて回想される。フリードリヒ・ヴィルヘルム四世やヴィルヘルム一世、ナポレオン三世、ロシア皇帝アレクサンドル二世らとの会談が、しばしば手駒の動かし方への自負とともに描かれる。

中盤の見せ場は、プロイセン首相就任後の三度の戦争である。デンマーク戦争ではシュレスヴィヒ=ホルシュタイン問題をオーストリアと共に処理し、その火種を巧みに普墺戦争に転化する。ケーニヒグレーツの会戦後、軍部はウィーン進撃を望むが、ビスマルクは将来の同盟を見越してオーストリアに寛大な講和を強い、国王の不満を押し切って合意を成立させる。続く普仏戦争では、エムス電報の編集でフランスに開戦を選ばせ、セダンでナポレオン三世を捕虜にする。ヴェルサイユ宮殿の鏡の間でドイツ皇帝即位式が挙行され、ドイツ統一が成就する場面には、達成感と同時に冷徹さが漂う。

後半では帝国宰相としての内外政策が振り返られる。三皇同盟、二重同盟、三国同盟、ロシアとの再保障条約と、複雑に重なる同盟網の意図が解説される。基本構想は、フランスを孤立させ、列強の関心を地中海やバルカン半島に向けさせ、ヨーロッパ中央のドイツに直接の脅威が及ばないよう均衡を保つことにある。内政では文化闘争が取り上げられ、カトリック中央党の動きやポーランド問題の側面から説明される。

終盤、若き皇帝ヴィルヘルム二世との対立と一八九〇年の辞任が、抑えきれない感情とともに語られる。主な争点は社会主義者鎮圧法や労働者保護立法をめぐる意見の食い違いで、親政を志向する皇帝に迫られて、ビスマルクは職を退く。この時期を扱う第三巻は皇帝への攻撃を含むため、皇帝の退位後になってようやく刊行された。

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