サ
『サド侯爵夫人』
さどこうしゃくふじん
三島由紀夫·現代
三島古典劇の頂点をなす全女性キャストの歴史劇
文学
この著作について
三島由紀夫が1965年11月、東京の紀伊國屋ホールで初演した3幕の戯曲。フランス革命前後を舞台にサド侯爵の妻ルネを中心に据えた、全登場人物が女性のみで構成される異色の古典劇で、三島晩年の代表作の一つである。
【内容】
第1幕(1772年)ではサド侯爵の投獄直後、貞淑な妻ルネが夫の無実を信じて闘う姿が描かれる。第2幕(1778年)ではルネの決意が明かされ、家族と社会の圧力が描かれる。第3幕(1790年)、革命によって出獄した夫が帰宅する直前、長年支えてきたルネは一転して夫を拒む。神聖な場所から戻ってきた夫を、もはや正気の自分では受け止めきれないという言葉で物語は閉じる。ラシーヌを模した韻律的なフランス古典劇の文体が、三島によって日本語で再構築されている。
【影響と意義】
戦後日本演劇における古典様式への意識的回帰として画期的であり、俳優座、新劇、小劇場の各潮流に広く影響を与えた。国際的にも上演機会が多く、ドナルド・キーン英訳を通じて世界の現代戯曲のレパートリーに加わった。
【なぜ今読むか】
極限的な言語美と思想的緊張が両立した稀有な戯曲。言葉の彫琢が失われがちな現代にこそ、朗読して味わう価値がある。
著者
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