『レ・ミゼラブル』
ユゴー·近代
19世紀フランスを舞台に贖罪と社会正義を描いた大河小説
この著作について
ヴィクトル・ユゴーが1845年から書き継ぎ1862年に公刊した、全五部にわたる大河小説。革命と王政復古を揺れ動く19世紀前半のフランスを舞台に、法と赦し、貧困と尊厳の問題を問い続けた文学的金字塔。
【内容】
パンを盗んで19年の徒刑を受けた元囚人ジャン・ヴァルジャンが、司教ミリエルの赦しに触れて回心し、市長ジャン・マドレーヌとして新たな人生を歩む。娼婦に転落したファンティーヌの娘コゼットを引き取り、警視ジャヴェールの執拗な追跡から逃れつつ彼女を育て上げ、1832年の六月暴動で青年マリユスを救って死んでいく。革命、修道院、パリの下水道、ワーテルローの戦いを描く巨大な社会パノラマのなかに、罪と赦しという魂の物語が重ねられる。
【影響と意義】
社会的不正義と個人の尊厳の回復というテーマを圧倒的な筆力で描き、19世紀ヒューマニズム文学の代表作となった。現代でも舞台・映画化を通じて普遍的な人間ドラマとして読み継がれている。
【なぜ今読むか】
「貧困は罪か、それとも社会の責任か」「法と正義は同じか」といった問いを、具体的な人物の運命を通して体感できる。貧困や犯罪をめぐる現代の議論に、魂の視点を取り戻す読書体験となる。
さらに深く
【内容のあらまし】
物語は一八一五年のディーニュ司教ミリエルの章から始まる。質素な暮らしを貫く老司教は、十九年の徒刑を終えて宿泊を断られ続けたジャン・ヴァルジャンを迎え入れる。深夜に銀の食器を盗んで逃げた元囚人を、警察に突き出すどころか「銀の燭台もあげるはずだった」と庇った司教の振る舞いが、ヴァルジャンの魂を打ち砕く。涙のうちに彼は名を変え、別人として生きる決意をする。
数年後、彼は北フランスの町モントルイユ・シュル・メールでガラス細工の工場主マドレーヌとして成功し、市長に選ばれる。工場を解雇された娼婦ファンティーヌが幼い娘コゼットを宿屋テナルディエ夫妻に預けたまま病に倒れたと知り、彼は彼女の死後コゼットを引き取ると約束する。同じ頃、警視ジャヴェールが市長の正体を疑い始める。別の男が「ヴァルジャン」として裁かれかけたとき、彼は法廷に名乗り出て自首する。
中盤の舞台はパリに移る。ヴァルジャンはコゼットを連れて修道院に身を隠し、やがて少女は娘らしく成長する。学生マリユスが公園で見かけたコゼットに恋し、二人は秘かに愛を交わす。マリユスは祖父との断絶、貧しい屋根裏部屋での暮らし、革命的友愛団体「ABCの友」との交流を経て、一八三二年の六月暴動に巻き込まれていく。サン・メリ修道院の近くに築かれたバリケードでは、街の少年ガヴローシュが歌を歌いながら銃弾に倒れる。
終盤、バリケードが落ちる直前にヴァルジャンは負傷したマリユスを背負い、悪臭のただようパリの下水道を抜けて脱出する。出口で待ち構えていたジャヴェールはヴァルジャンを逮捕すべきか赦すべきか苦悩し、その夜セーヌ川に身を投げる。マリユスとコゼットの結婚式、和解、そしてヴァルジャンの晩年。彼は自分の過去を恐れて若い夫婦から身を引き、孤独のうちに病み衰える。最後の場面で、コゼットとマリユスが駆けつけたとき、司教からもらった銀の燭台の光のもとで、ヴァルジャンは死ぬことは何でもないが生きないことこそ恐ろしいのだと呟いて目を閉じる。
著者
関連する哲学者と話してみる
