喫
『喫茶養生記』
きっさ ようじょうき
栄西《えいさい》·中世
栄西の茶の効用書
哲学
この著作について
臨済禅の祖・栄西《えいさい》が晩年に著した日本最古の茶の専門書で、禅院の喫茶文化を社会に解き放った記念碑的著作。
【内容】
上巻では茶を「心の臓を健やかにし、諸病を癒す仙薬」と位置づけ、中国医学の五行思想を下敷きに、茶の苦味が心臓に働き他の四臓の調和を取り戻すと説く。茶の種類、採取、焙煎、保存、抹茶として点てる作法まで、栄西が入宋中に学んだ禅院の実際が詳細に記される。下巻は一転して桑の薬効に充てられ、中風・飲水病・脚気・疱瘡などへの治療法が列挙される。序文では「末世の養生の仙薬として、これを書き送る」という献上の趣旨が明記されている。
【影響と意義】
将軍源実朝《みなもとのさねとも》の二日酔いに本書と茶を献じた逸話が『吾妻鏡《あずまかがみ》』に残り、以後、武家層に喫茶文化が広がる契機となった。南北朝以降の抹茶喫茶、やがて千利休に結実する茶の湯、さらには一般的な日本の緑茶文化へと連なる流れの最初の一滴が本書である。
【なぜ今読むか】
カフェインや機能性食品への関心が高まる現代にも通じる「健康飲料としての茶」の感覚が、八百年前にすでに鋭く言語化されていたことに驚かされる。日々の一杯の茶を文化史の深みとともに味わい直せる短い名著である。
著者
関連する哲学者と話してみる
