フィロソフィーマップ

秘密曼荼羅十住心論

ひみつまんだらじゅうじゅうしんろん

空海《くうかい》·中世

空海が密教の体系を十段階の心で論じた主著

Amazonで見る
宗教

この著作について

真言密教の祖・空海《くうかい》が天長勅撰の際に淳和天皇の命を受けて著した大著で、日本仏教史上もっとも壮大な思想体系の一つ。

【内容】

本書は人間の精神の発達段階を十段階の「住心」として配列する構成を取る。第一「異生羝羊心《いしょうていようしん》」は欲望に駆られて羊のように生きる凡夫、第二「愚童持斎心《ぐどうじさいしん》」は倫理的段階(儒教に対応)、第三「嬰童無畏心《ようどうむいしん》」はインド思想や道教、第四「唯蘊無我心《ゆいうんむがしん》」は小乗仏教、第五以降は縁覚、三論、天台、華厳と進み、第九「極無自性心《ごくむじしょうしん》」で華厳の究極に達したのち、第十「秘密荘厳心《ひみつしょうごんしん》」すなわち真言密教に至る。各段階で代表的経典を引用し、その思想の特徴と限界が論じられる。のちに短く書き直した『秘蔵宝鑰《ひぞうほうやく》』も併読される。

【影響と意義】

諸思想を序列的に配する教判論は中国仏教にも先例があるが、日本人による独創的な思想体系として、また儒教・道教・インド諸思想・仏教諸宗を網羅した比較思想の古典として高く評価される。真言宗の教学の骨格であると同時に、後世の日本仏教全体における密教の位置づけにも決定的な影響を与えた。

【なぜ今読むか】

専門分化が進む現代に、諸思想を壮大な一望のうちに収めようとした九世紀の知的建築に触れることは、学際的思考を志す人への刺激となる。空海の思想的野心そのものを体験できる書物である。

著者

関連する哲学者と話してみる

Amazonで見る