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「十字架の神学」の成立

じゅうじかのしんがくのせいりつ

青野太潮《あおのたしお》·現代

パウロ十字架神学を緻密に論じた研究書

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哲学神学聖書学

この著作について

新約聖書学者の青野太潮《あおのたしお》がパウロの十字架神学の成立過程を緻密な聖書解釈に基づいて論じた研究書である。1989年6月にヨルダン社から刊行され、533頁の浩瀚な著作だ。

【内容】

パウロ書簡における十字架の言葉を、ヘレニズム的キリスト教の発展とユダヤ教的伝統との緊張のなかに位置づけ直す。著者は十字架を勝利と栄光の徴ではなく、依然として「弱さ」のなかに留まるものとして読み解き、贖罪論的解釈一辺倒であった伝統的理解に大胆な問題提起を行う。原語の細部に分け入った注解と組織神学的考察が両立しており、研究書としての密度と思想書としての射程を併せ持つ。

【影響と意義】

戦後日本の新約聖書学を代表する仕事の一つとして長く参照されてきた。パウロ十字架神学を「逆説の神学」として捉え直す視点は、その後の日本のパウロ研究に持続的な影響を与えている。現在は教文館オンデマンド版で入手可能である。

【なぜ今読むか】

苦しみのなかにある弱さをそのまま肯定する逆説の思考は、勝利と効率を尊ぶ現代社会にとってこそ刺激的だ。聖書学の精緻と神学の深さが交差する地点で、現代に生きる意味を考え直すための一冊である。

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