幸
『幸福論(ヒルティ)』
こうふくろん
カール・ヒルティ·近代
信仰と労働と誠実さの観点から幸福を語る三大幸福論の一角
哲学宗教
この著作について
スイスの法学者・著述家カール・ヒルティ(1833〜1909)が1891年から1899年にかけて三巻本として刊行した『Glück』の邦訳。アラン・ラッセルの幸福論と並ぶ世界三大幸福論の一冊として日本では岩波文庫等で長く読まれてきた。
【内容】
第一巻は「仕事の上手な仕方」「時間を作る秘訣」「幸福」など実践的な短編で構成され、勤勉と誠実な労働の倫理を中心に据える。第二巻は「人間関係」「不眠」「祈祷」など人生の具体的な悩みを取り上げ、信仰生活との接続を語る。第三巻は「永生」「神の道」「世界観」など、より宗教的・形而上学的な主題に踏み込む。プロテスタント信仰と古典古代のストア主義、近代の労働倫理を統合した独特の幸福観が貫かれている。
【影響と意義】
日本では明治末期から内村鑑三・矢内原忠雄ら無教会派キリスト者を経由して受容され、戦前戦後を通じて教養書として読み継がれた。労働を通じた自己形成、信仰による不安の鎮静、誠実さを核とした生き方という主題は、現代のセルフヘルプ書の宗教版的源流の一つとして機能している。
【なぜ今読むか】
娯楽消費型の幸福観とは異なる、労働と信頼にもとづく幸福の古典的モデルに触れるための一冊である。