侍
『侍女の物語』
じじょのものがたり
マーガレット・アトウッド·現代
宗教的全体主義国家における女性の隷属を描いたディストピア小説
文学政治
この著作について
カナダの作家マーガレット・アトウッド(1939〜)が1985年に刊行した長編小説『The Handmaid's Tale』の邦訳。二十世紀後半の代表的フェミニズム・ディストピア文学である。
【内容】
近未来のアメリカは「ギレアデ共和国」というキリスト教原理主義の全体主義国家に置き換わっている。出生率の急落により、生殖能力のある女性たちは「侍女(Handmaid)」として有力者の家庭に配属され、月経周期に合わせて妻の存在のもとで儀礼的に夫と性交を強要される。語り手「オフレッド」は読書も自由な発話も禁じられた中で、過去の自由な生活の記憶と現在の隷属を心の中で交錯させる。最後の章「ギレアデ研究の歴史的注解」が物語全体に奥行きを与える二重構造になっている。
【影響と意義】
アトウッドは作中の出来事はすべて「人類の歴史で実際に起きたこと」を組み合わせたと述べており、本書は宗教的全体主義・生殖支配・女性の身体管理への警告として広く読まれてきた。続編『誓願』(2019年)の刊行とドラマ化を経て、二十一世紀の中絶反対運動・宗教保守の伸張のなかで象徴的な意味を再び帯びている。