グ
『グノーシスの宗教』
ぐのーしすのしゅうきょう
ハンス・ヨナス·現代
古代グノーシス主義を実存論的に解読した古典
哲学宗教宗教史
この著作について
ハンス・ヨナスの初期主著にして、二十世紀の宗教史学・哲学的神学に大きな衝撃を与えた古典。マールブルク時代の博士論文に淵源し、英語版 The Gnostic Religion(一九五八)として再構成された本書は、人文書院から一九八六年に邦訳刊行された。
【内容】
本書は、ヘレニズム期から初期キリスト教時代にかけて生まれた多様なグノーシス諸派を、ヴァレンティノス派、マニ教、マンダ教、ヘルメス文書などにわたり横断的に扱う。それらに共通する象徴言語と教義構造を、被投性《ひとうせい》・異邦性・救済という実存的カテゴリーで解読する。世界を悪しき神の創造物とし、人間の真の故郷を物質界の彼方に置くグノーシス的世界観を、ハイデガーの実存分析を補助線として再構築する手つきは独自のものである。最終章では、近代のニヒリズムが古代グノーシスと驚くほど似た構造を持つと指摘し、現代精神史への射程を開いている。
【影響と意義】
本書はグノーシス研究そのものを刷新したのみならず、二十世紀宗教思想・哲学的神学・近代ニヒリズム論に決定的な影響を与えた。ヨナス自身の後年の主著『責任という原理』に通じる「世界を喪失した自我」の問題系は、ここに既に明確に提示されている。
【なぜ今読むか】
世界からの疎外感・陰謀論的世界観・テクノロジー宗教といった現代の精神状況を、二千年前の宗教運動と重ねて省みる視点を与えてくれる。宗教史と哲学を貫いて読むことの面白さを存分に味わえる一冊である。
著者
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