『統治論断片』
とうちろんだんぺん
ジェレミ・ベンサム·近代
ベンサムが1776年に匿名で出した法と統治の論考。最大多数の最大幸福を根本公理として掲げた
この著作について
ジェレミ・ベンサムが1776年に匿名で出した、法と統治をめぐる論考。ベンサムが功利性を行為と法の指針として初めて世に掲げた本である。
【内容】
ブラックストンの『イギリス法釈義』の序論のうち、統治一般を論じた一節を取り上げて検討する。序文では、正と不正の尺度となるのは最大多数の最大幸福である、という一文を根本公理として掲げる。法を論じる者の役を、現にある法を説明する解説者と、あるべき法を示す批評者に分け、ブラックストンの最大の欠点を改革への敵意に見る。本論5章では、統治の成り立ち、統治の形態、イギリスの国制、最高権力が法をつくる権利と義務を順に扱う。社会の始まりに原初の契約があったとする説は作り話として退けられ、約束を守るべき理由は、それが社会にとって利益になることに求められる。
【影響と意義】
本書は、ブラックストンへのより大きな批判の原稿から生まれた小著で、その原稿は20世紀まで刊行されなかった。ベンサムは後年、長く無条件にたたえられてきた『イギリス法釈義』への、活字での最初の目立った異議だったと振り返っている。よき市民の標語として、きちんと従い、自由に批判せよ、という句を示したのも本書である。最大多数の最大幸福という定式は功利主義の標語として広まったが、ベンサム自身はのちに、これが多数派のために少数派へ過大な犠牲を強いることを正当化しかねないと考え、最大幸福原理という言い方に改めた。
【なぜ今読むか】
現にある法の説明と、あるべき法の議論を分けるという区別は、制度を論じるときの基本として今も役に立つ。伝統や作り話に頼らず、人々の幸福への影響で制度を測る姿勢の出発点を確かめられる。
著者
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