言
『言語の本質』
げんごの ほんしつ
今井むつみ·現代
言語の本質とは何かを認知科学・言語習得・オノマトペの観点から論じた、現代認知科学による言語と思考の関係の探究
哲学
この著作について
認知科学者・今井むつみ(いまいむつみ)と言語学者・秋田喜美《あきたきみ》が共著で、オノマトペを手がかりに言語の成り立ちを問い直した現代言語論。
【内容】
本書の出発点は、「ころころ」「ふわふわ」「ツルツル」といったオノマトペが、身体感覚と抽象的な言葉のあいだを繋ぐ特殊な位置を持つという事実である。幼児は動作や感触を写し取るようなオノマトペを先に獲得し、それを足場にやがて抽象語と文法を身につけていく。実験心理学と言語類型論の豊富なデータから、この過程が詳細に示される。さらに、オノマトペの研究はAIに欠けている「記号接地問題」、すなわち言葉と身体経験がどのように結びつくかという難問に接続され、大規模言語モデルの限界を照らすための切り口としても提示される。
【影響と意義】
チョムスキー以降の生成文法では周辺扱いされがちだったオノマトペを主題に据えた点で、身体性認知、言語進化、AI研究の議論に鮮やかに切り込んだ。新書大賞を受賞するなど一般読者からの評価も高く、日本語という豊かなオノマトペ体系を背景に、世界的な言語研究への貢献として注目されている。
【なぜ今読むか】
生成AIが言葉を自在に扱うように見える時代に、身体を持つ人間に固有の言語の成り立ちを再確認できる。子育てや教育、多言語学習に関わる実務家にも、大きな示唆を与える一冊である。