記
『記号の国』
きごうのくに
ロラン・バルト·現代
バルトが日本を記号論の理想郷として描いた独創的日本論
哲学文化
この著作について
ロラン・バルト(Roland Barthes)が1970年に刊行した日本論(原題『L'Empire des signes』)。バルトが1966年から三度にわたって訪日した経験をもとに、日本の文化現象を記号論的観察の素材として綴った独自のエッセイ集である。
【内容】
本書は日本を実在の国としてではなく、西洋の意味中心主義を映し返す「記号の帝国」として描く。巻・著者・ステーキ・駅弁・俳句・パチンコ・ボーイ・歌舞伎役者・天皇・暴力的漫画など、二十六の断章的テーマが扱われる。俳句の省略、料理の透明性、都市東京の空虚な中心(皇居)、身振りの繊細な形式性を通して、バルトは西洋の「意味で充満した記号」に対し、日本の「意味から解放された記号」を対比的に描く。写真と図版を多用する構成、自筆の書き込み、手紙の複写などが本文を横断し、エッセイの形式そのものが記号論的実験となっている。
【影響と意義】
本書は西洋の日本論の古典として、のちのポストコロニアル日本論、オリエンタリズム批判、文化記号論の議論を準備した。日本の読者からはエキゾチズムの疑いとともに、自文化を外部の視線で異化する鏡として長く読み継がれている。ミシェル・ド・セルトー、フィリップ・ソレルスらの日本観察にも強い影響を残した。
【なぜ今読むか】
観光・アニメ・食文化を通じて再び日本が語られる時代に、文化を意味で埋めずに記号として読むことの快楽と慎みを思い出させてくれる。
著者
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