『経済と社会』
けいざいとしゃかい
マックス・ヴェーバー·現代
社会学の体系化を試みたヴェーバー未完の大著
この著作について
マックス・ヴェーバーが晩年の1910年代に執筆を続け、1920年の死により未完のまま残された社会学の体系書。妻マリアンネが遺稿を編纂し、1922年に初版が公刊された。
【内容】
本書は「社会的行為」を社会学の基礎単位と捉え、行為の意味を理解する解釈的社会学の方法論を打ち出す。支配の三類型(伝統的・カリスマ的・合法的)、官僚制、宗教社会学(カルヴィニズムと資本主義)、経済社会学、都市社会学、法社会学、音楽社会学まで、膨大な主題を横断する。未完ゆえの未整理さが残るものの、20世紀社会学の基本概念の大半がここで提示された。
【影響と意義】
本書はパーソンズ、ハバーマス、ブルデュー、ギデンズら後続の主要社会学者すべての出発点となった。支配の類型論は政治学・経営学にまで波及し、官僚制論は現代組織論の基礎となっている。ラインハルト・ベンディックス、ヴォルフガング・シュルフター、ピーター・ブラウらの後続ヴェーバー研究を通じて現代まで読み継がれる。
【なぜ今読むか】
大きな組織や政治体制の正当性がどこから来るかを問うとき、ヴェーバーの支配類型は今なお最も洞察に富む枠組みを提供する。プラットフォーム企業の新しい支配形態を分析する際の語彙としても依然有効である。
さらに深く
【内容のあらまし】
本書はヴェーバー自身が完成させた書物ではない。彼は晩年、社会経済学全体を覆う総合的な手引書を構想し、一九一〇年代を通じて膨大な原稿を書き継いでいたが、一九二〇年にスペイン風邪で死去したため、未完のまま残された。妻マリアンネと弟子たちが遺稿を整理し、二年後に第一版が刊行された。原稿の段階別に内容も主題も異なるため、本書は事典的な体系書というより、ヴェーバー社会学の概念群を網羅したアトラスとして読まれる。
第一部「社会学的範疇論」が概念装置の部分である。ヴェーバーはまず社会学を「社会的行為の意味理解的解釈と因果説明を試みる科学」と定義する。行為とは行為者が主観的な意味を結びつける振る舞いであり、社会的行為は他者の行動を考慮に入れた行為である。彼は行為を四類型に整理する。目的合理的、価値合理的、感情的、伝統的。続いて「秩序」「合法性」「闘争」「共同体と社会」「経済行為」と段階的に概念が積み上げられる。
中盤の山場が「支配の社会学」である。支配とは、特定の命令が一定の人々に服従されることであり、その正当性根拠によって三類型に分けられる。伝統的支配は、太古から続く慣習を理由に承認される。家父長制や家産制の王権がここに属する。カリスマ的支配は、指導者の例外的資質への帰依に基づく。預言者、軍事的英雄、革命家がそれである。合法的支配は、抽象的規則の体系への信頼に基づく。これは官僚制という形態と結びつき、近代国家、近代企業、近代軍隊を貫く支配形式となる。
後半の宗教社会学では、世界宗教の経済倫理が比較される。古代ユダヤ教、ヒンドゥー教、仏教、儒教、道教、そしてキリスト教の諸潮流。それぞれの救済観と職業観のあいだの結びつきが、文明ごとの経済発展の差異と関連づけられる。法社会学では、形式合理的な法の発展がいかに近代資本主義の予測可能性を支えたかが論じられ、都市社会学では、西洋の自治都市が市民層形成にとって決定的だったことが論じられる。未完ゆえの不揃いさを抱えながら、本書は二十世紀社会学の概念地図そのものとなった。
著者
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