ダ
『ダライ・ラマ自伝』
だらい・らまじでん
ダライ・ラマ14世·現代
ダライ・ラマ14世が自らの生涯と信念を語った自伝
自伝
この著作について
チベット仏教ゲルク派の最高指導者ダライ・ラマ十四世テンジン・ギャツォが、自らの生涯と亡命の経緯を率直に語った自伝。
【内容】
本書は、東北チベット・アムドの農村に生まれた少年が、前世ダライ・ラマ十三世の転生者として認定され、ラサのポタラ宮で仏教学と行政の英才教育を受ける少年時代から始まる。一九五〇年の中国人民解放軍による侵攻、一九五九年のラサ蜂起とインドへの亡命、ダラムサラでの亡命政府樹立と亡命者コミュニティの構築、非暴力による「中道政策」の提唱、中国政府との対話の試みと挫折、世界各国の首脳・宗教指導者との交流までが、穏やかな筆致で辿られる。背景には、仏教思想(空、縁起《えんぎ》、慈悲)と近代政治のあいだでどう責任ある指導者であろうとするかという一貫した問いが流れている。
【影響と意義】
本書は、チベット問題への国際的関心を高め、一九八九年のノーベル平和賞受賞の背景ともなった。大乗仏教の慈悲と非暴力を、現代政治の過酷な文脈で生きる範例として世界に示した点で、宗教・政治・倫理の境界を越えた影響を持ち続けている。
【なぜ今読むか】
ユーモアと謙虚さを湛えた語り口からは、困難な政治状況のなかで慈悲と非暴力を実践し続ける精神の強靭さが、押しつけがましさなく伝わってくる。憎しみが政治を動かしがちな時代に、静かな指針となる一冊である。