哲
『哲学の誕生:ソクラテスとは何者か』
てつがくのたんじょう:そくらてすとはなにものか
納富信留·現代
ソクラテスをめぐる古代の論争から哲学の始まりを描いた納富信留の本
哲学古代哲学
この著作について
西洋古代哲学の研究者・納富信留《のうとみのぶる》が、ソクラテスとは何者だったのかをめぐる古代の論争から、哲学がどのように生まれたのかを描いた本である。2005年にちくま新書で出た版を増補改訂し、2017年にちくま学芸文庫として刊行された。
【内容】
何も書き残さなかったソクラテスが、なぜ最初の哲学者とされるのか。本書は、ソクラテス、プラトン、アリストテレスという3人の天才の達成として哲学の始まりを語る見方では、見落とされるものがあると考える。前399年の死刑のあと、ソクラテスを批判する人々と擁護する人々のあいだで論争が起こり、弟子たちは「ソクラテス対話篇」を次々に公刊した。プラトンの対話篇やクセノフォンの著作を含むこの「ソクラテス文学」を読み比べ、まず『パイドン』が描く死の場面から、プラトンがその語りに込めたものを探る。続いて、寡頭派政権の中心人物クリティアスや、奔放な政治家アルキビアデスとソクラテスの関係をめぐる攻防を追う。最終章では明治以来の日本でのソクラテスの受け取られ方をたどり、「無知の知」という標語が歴史の歪みから生まれた誤解だと論じる。文庫版には、ソフィストと哲学者の関係を問い直す補論と、新書版のあとの研究状況にふれる「文庫版あとがき」が加わった。
【影響と意義】
残された対話篇や、題名と断片だけが伝わる作品から、一人に定まらない多様なソクラテス像を浮かび上がらせる点に特色がある。
【なぜ今読むか】
日本でよく知られた「無知の知」という言い方を、そのまま受け取ってよいのかを考え直すきっかけになる。

