『権威主義的パーソナリティ』
けんいしゅぎてきぱーそなりてぃ
テオドール・アドルノ、エルゼ・フレンケル=ブルンスヴィック、ダニエル・レヴィンソン、ネヴィット・サンフォード·現代
ファシズム追随者の心理構造を定量的に解明した共同研究の金字塔
この著作について
フランクフルト学派のテオドール・アドルノが、カリフォルニア大学バークレー校の心理学者エルゼ・フレンケル=ブルンスヴィック、ダニエル・レヴィンソン、ネヴィット・サンフォードと共に1950年に公刊した大部の共同研究。ナチズムやファシズムに追随する人間の心理構造を実証的に解明しようとした、20世紀社会心理学の記念碑的著作である。
【内容】
大規模インタビューと投影法を組み合わせ、「Fスケール(Fはファシズムの頭文字)」と呼ばれる尺度を開発する。反ユダヤ主義、権威への服従、伝統への固執、攻撃性の転位、反理知主義、迷信への親和性といった心理傾向が相互に高い相関を持つことを統計的に実証した。これらの傾向が、厳格で処罰的な父親像の内面化を通じて幼少期に形成されると精神分析的に説明される。
【影響と意義】
戦後社会心理学、政治心理学、教育心理学に広範な影響を与えた。近年もアルトマイヤーの右翼権威主義研究、トランプ政権以後のポピュリズム研究の遠い源流として頻繁に引用される。
【なぜ今読むか】
権威主義的ポピュリズムが世界的に台頭する今、最も重要な古典的分析。
さらに深く
【内容のあらまし】
本書は全23章で、序論の第1章のあとに五部が続き、第23章の結論で閉じる。巻頭の序文でホルクハイマーは、権威主義的な型の人間を、啓蒙されていながら迷信深く、独立を大事にしながら権力と権威には盲目的に従う者として描く。序論は、政治、経済、社会についての個人の信念はしばしば一つのまとまった型をなし、人格の深い傾向の表れだという仮説から出発する。調べるのは公然たるファシストでなく潜在的ファシストである。質問紙の回答者は2099人で、無作為の標本ではなく大半が中産階級に属する。結果がおおむね当てはまると見込まれるのは非ユダヤ系で白人の、アメリカ生まれの中産階級の人々だと著者たちは限る。
第一部の第2章は、民族中心主義の尺度で高得点のマックと低得点のラリーという二人の大学生の面接記録を並べる。続く三つの章で反ユダヤ主義、民族中心主義、政治経済的保守主義の尺度が作られる。第7章では、少数派の名を出さずに偏見を測るだけでなく、人格の水準で反民主主義的な傾向を数量化することを主な狙いに、ファシズムの頭文字を取ったF尺度が組まれた。土台は、因習主義と権威への服従に始まり、投射性と性への過剰な関心で終わる九つの変数である。
第二部は臨床面接、第三部は投影法の資料から、偏見を持つ人の人格に迫る。第四部はアドルノの担当である。偏見はその中身からすると、向けられる相手の実際の性質とほとんど関係がないという仮説のもと、社会的には比較的弱い相手に不気味な全能を見てしまう空想を「想像上の敵」として読み解く。政治の面接の章では、保守主義も民族中心主義も高い偽保守の型を掘り下げ、自我の水準では因習的で権威に従順なのに、無意識の領域には暴力や混沌とした破壊性を抱えるものとして描く。第19章は高得点者に六つ、低得点者に五つの症候群を区別し、その最後に置かれた「真のリベラル」には、危険を冒しても不正を前に黙っていられない道徳的な勇気があるとする。
第五部はマックとラリーの人格の成り立ちに立ち返り、人格の変数が極端に現れる受刑者や精神科の患者の集団を調べる。結論の章は、家族や性から宗教、政治の考え方まで、一人の人の構えがよく対応していることを最も重要な結果に挙げる。潜在的にファシズムに傾く構造は、心理学の手段だけでは変えられない。その課題は神経症や非行やナショナリズムを世界からなくすことに等しい。どれも社会全体の組織の産物であり、社会が変わってはじめて変わる。恐れと破壊性がファシズムの主な情緒的源泉なら、エロスは主に民主主義に属すると結ぶ。日本語訳は第1、7、10〜12、17、19、23章の抄訳である。
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