ウ
『ウソつきの構造』
うそのにんげんがく
中島義道《なかじまよしみち》·現代
嘘の日常的不可避性を解剖する中島義道《なかじまよしみち》の異色の倫理エッセイ
倫理学
この著作について
哲学者・中島義道が1997年に公刊した『嘘をつく人間』を元にした哲学エッセイ。カント哲学・現象学を専門とする著者が、日本的な嘘の日常を鋭く解剖した、岩波新書や講談社現代新書版でも広く読まれた問題作。
【内容】
社交辞令、お世辞、建前、黙秘、沈黙、顔色、そして自分自身への欺瞞まで、日本社会を円滑に動かす無数の「嘘」を具体例を挙げて分類し、そのいずれもが他者や自分自身に対する誠実さを損なうプロセスであると指摘する。カント的な厳格主義を下敷きにしながらも、机上の絶対禁止論に留まらず、日本社会に固有の「ウェット」な嘘の構造を内在的に批判する独特のスタイルが特徴。著者個人の家族関係・職場体験を惜しまず持ち込む筆致も、本書を倫理学書としては異例の読み物にしている。
【影響と意義】
日本における嘘と誠実をめぐる倫理的議論の一つの出発点となり、著者の「哲学的苦悩シリーズ」の代表作の一つとして、哲学書としては異例の大衆的支持を得た。
【なぜ今読むか】
忖度・同調圧力・ハラスメントをめぐる近年の議論のなかで、日本型の嘘の構造を解剖する視座として再読する価値がある。