虚
『虚構の「近代」』
きょこうのきんだい
ブリュノ・ラトゥール·現代
「近代」の二元論的世界観を解体する科学技術社会学の代表作
社会科学
この著作について
フランスの科学社会学者・哲学者ブリュノ・ラトゥール(1947〜2022)が1991年に公刊した代表作(原題『Nous n'avons jamais été modernes』)。アクター・ネットワーク理論(ANT)の理論的綱領を示した記念碑的著作である。
【内容】
ラトゥールは、近代社会が自らを「自然と社会・客体と主体・科学と政治を厳格に分離した社会」と自己理解してきたことを「近代の憲法」と呼ぶ。しかし実際には、オゾンホール、エイズウイルス、コンピュータ、地球温暖化など、近代社会で増殖したのは自然と社会の混合物(ハイブリッド)に他ならない。「私たちは決して近代だったことなどない」というのが本書のテーゼ。代わりに、人間と非人間(モノ、技術、自然物、概念)が対称的にアクターとして絡み合うネットワークを記述する社会学が提案される。
【影響と意義】
アクター・ネットワーク理論の代表的展開として、科学技術社会論(STS)、人類学、地理学、政治理論に絶大な影響を与えた。グレアム・ハーマンの対象指向存在論、ジェーン・ベネットの活力的物質論など、思弁的実在論にも継承されている。日本では川村久美子らの訳を経て、現代思想の重要文献となっている。
【なぜ今読むか】
気候危機・パンデミック・AI規制など、自然と社会が分かちがたく絡み合う現代問題を考える理論的足場。