暴
『暴力:6つの斜めからの省察』
ぼうりょく
スラヴォイ・ジジェク·現代
システム的暴力の不可視性を抉る六つの省察
哲学現代思想政治哲学
この著作について
スロヴェニアの哲学者スラヴォイ・ジジェクが2008年に刊行したViolence: Six Sideways Reflectionsの邦訳である。中山徹の訳により2010年に青土社から出版された。
【内容】殺人・テロ・虐殺といった目に見える「主観的暴力」の背後に、言語の暴力など象徴的暴力、そして資本主義経済の構造そのものが押しつける「客観的暴力(システム的暴力)」が潜むと論じ、六つの省察を通してこれらの不可視の暴力を抉り出す。9.11、フランス郊外暴動、リベラル人道主義の偽善、慈善資本主義などを例にとりながら、可視的暴力への過剰反応がシステム的暴力の温存に寄与している逆説を指摘する。
【影響と意義】ジジェクの政治批評の代表作の一つとして広く読まれ、ポスト資本主義時代の暴力論をリベラル人道主義への批判という鋭利な角度から組み直した。グローバル左派の論壇に大きな影響を与え、日本語圏でも社会運動・批評の文脈でしばしば引照される。
【なぜ今読むか】個別事件への即応的な道徳的憤激が日常化する一方で、その怒りが構造的暴力を覆い隠す働きをすることがある。本書はその逆説を可視化し、立ち止まって考えるための見取り図を与える。短い断章で構成されるためジジェク入門としても読みやすい。