杜
『杜子春』
とししゅん
芥川龍之介·現代
芥川龍之介の童話的短編
哲学
この著作について
芥川龍之介が児童雑誌「赤い鳥」に寄せた短編で、中国・唐代の伝奇『杜子春伝《としじゅんでん》』を大胆に翻案した童話的作品。
【内容】
舞台は唐の都・洛陽。零落した青年・杜子春は橋のたもとで途方に暮れているところを、鉄冠子《てっかんし》と名乗る仙人に出会い、二度にわたり莫大な富を授かる。富を得ればたちまち人が群がり、尽きればみな去る世の現実を身に沁みて知った杜子春は、三度目には仙人の弟子になることを願い、峨眉山で「何があっても声を出すな」という試練を課される。地獄で鞭打たれる亡き父母の姿を前に、ついに「お母さん」と叫んでしまった杜子春は仙術に失敗する。しかし仙人は静かに微笑み、畑と家を与えて人間らしく生きることを勧めて姿を消す。
【影響と意義】
原典の道教的な教訓話を、家族愛と人間的生活の肯定という近代的テーマに書き換えた点で、児童文学の古典として長く読み継がれてきた。国語教科書の定番教材でもあり、日本人にとって最もなじみ深い芥川作品のひとつである。
【なぜ今読むか】
成功と富を追い続ける現代の価値観に対し、「ごく普通の人間として生きる」ことの尊さを静かに差し出す寓話である。短く読めて、大人になってから読むほど深く響く一編である。
著者
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