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『トカトントン』
太宰治·現代
戦後ニヒリズムを書簡体で描いた太宰短編
哲学文学日本文学
この著作について
太宰治が1947年1月号の雑誌「群像」に発表した書簡体短編。敗戦直後の日本を生きる青年が、敬愛する作家「先生」に宛てて自身の症状を訴える長い手紙、という体裁で書かれた、戦後太宰を代表する一篇である。
【内容】
語り手の青年は、何かに熱中しかけるたびに、どこからともなく金槌を打つような幻聴「トカトントン」が聞こえ、その瞬間にすべての情熱が冷めてしまう、と打ち明ける。終戦の玉音放送の直後、すぐ近くで響いた釘を打つ音をきっかけに始まったその幻聴は、恋愛、文学、ストライキ、宗教、政治運動、自殺の決意までを片端から無効化していく。手紙の最後に「先生」から返ってくる短い助言は、青年の症状を簡単に治してくれるわけではない。
【影響と意義】
敗戦による価値観の崩壊と、それに続く言葉の空転を、症状という一点に圧縮して描いた代表的な戦後文学として、繰り返し論じられてきた。「トカトントン」という擬音そのものが、戦後ニヒリズムを表す合言葉として批評史に残った。
【なぜ今読むか】
何かに本気になろうとした瞬間に冷めていく感覚は、SNS時代の倦怠ともよく似ている。短い書簡体小説のなかに、自分の中の「トカトントン」を見つけ直すことができる。
著者
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