白
『白痴』
はくち
ドストエフスキー·近代
ドストエフスキーの長編小説
哲学
この著作について
ドストエフスキーが亡命中の困窮のなかで書き上げた長編で、「完全に美しい人間」を描こうという彼自身の構想が結実した野心作。
【内容】
スイスの療養所で癲癇の治療を受けていたムイシュキン公爵がペテルブルクに戻る列車の場面から物語は始まる。彼は子供のように純真で、嘘をつけず、あらゆる人に深い同情を寄せる。零落した美女ナスターシャと裕福な娘アグラーヤの二人への愛情、商人ロゴージンの暴力的な情熱が交錯し、都会の欺瞞と俗物性のなかで公爵の善意は誤解と破滅を呼び寄せる。結末では殺人の夜をロゴージンと二人で過ごし、公爵は再び心を閉ざす「白痴」へ戻っていく。
【影響と意義】
キリスト的聖性を近代社会で生きる人物として描こうとした試みは、トーマス・マン、亀井勝一郎、遠藤周作ら多くの作家に深い刺激を与えた。ロシア文学と宗教哲学をつなぐ作品として、ベルジャーエフ以降の読解でも中心的に扱われる。
【なぜ今読むか】
善意が必ずしも報われず、ときに周囲を巻き込んで傷を広げる現実のなかで、「それでも善くあろうとする」とはどういうことかを粘り強く問える。素朴な優しさの苦しみと尊さを見つめ直す鏡となる。
著者
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