後
『後悔の力』
こうかいのちから
ダニエル・ピンク·現代
後悔の感情を前向きに活かす方法を科学的に論じた心理学書
心理学
この著作について
『モチベーション3.0』『ハイ・コンセプト』などで知られる作家ダニエル・H・ピンクが、世界十六万人規模の調査と心理学研究をもとに、後悔という感情の価値を再評価した著作。
【内容】
本書はまず、「後悔のない人生」を掲げる現代の自己啓発言説を批判し、後悔は人間にだけ許された深い認知能力の一部であると論じる。ピンクはアメリカン・リグレット・プロジェクトと世界リグレット調査のデータから、人々の後悔を「基盤の後悔(健康・お金・学習などの基礎を怠った後悔)」「大胆さの後悔(挑戦しなかった後悔)」「道徳の後悔(誠実さを失った後悔)」「つながりの後悔(関係を途切れさせた後悔)」の四類型に分類する。そのうえで、未来の自分宛の手紙、セルフ・コンパッション、具体的学び取りなど、後悔を将来の行動変容に接続する具体的な手法が提案される。
【影響と意義】
ネガティブ感情を排除するのではなく活用するという視点を前面に出し、ポジティブ心理学の偏りを補正する試みとして注目された。行動経済学や認知心理学の知見を生活実践に翻訳する、現代ビジネス書の代表例の一つとなっている。
【なぜ今読むか】
誰もが抱える後悔を、「克服すべき弱さ」でも「忘れるべき過去」でもなく、「未来の自分を鍛える材料」として捉え直せる。過去を引きずりがちな人に、やさしく実践的な助けとなる一冊である。