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郵

『郵便局』

ゆうびんきょく

現代

死の床にある少年と外界との交感を描いたタゴール戯曲

文学

この著作について

ラビンドラナート・タゴールが1912年にベンガル語で書き上げ、同年コルカタで初演された短い戯曲。1913年に英訳が公刊され、タゴールのノーベル文学賞受賞(1913)に直接貢献した、タゴール演劇の代表作の一つである。

【内容】

全2幕。重病のため屋内に閉じ込められた少年アマルは、窓の外を通る郵便配達・物売り・村人・医者たちを眺め、彼らとの短い会話を通じて外の世界と交感する。養父マダブが「王様から手紙が届く」と慰めると、アマルはこれを信じて静かに死を待つ。最後に実際に王の伝令が到着し、少年は眠るように息を引き取る。死と希望、外界への憧れと内面の解放が、童話的な透明な言語で描かれる。

【影響と意義】

第二次大戦中、ワルシャワ・ゲットーのユダヤ人教育者ヤヌシュ・コルチャックが、収容所に送られる孤児たちのためにこの戯曲を上演させたことでも知られる。アンドレ・ジッド、W・B・イェイツが高く評価し、以後世界各地で繰り返し上演されてきた。

【なぜ今読むか】

短く読めるが余韻の長い一篇。終末期ケア・死生学・児童文学の観点から、現代にも多くの示唆を与える。

さらに深く

【内容のあらまし】

全2幕で、舞台はマダブの家から動かない。第1幕は医者とマダブの会話で始まる。医者は秋の日差しと湿気が毒だから少年を外に出すなと命じる。マダブは訪ねてきた老人に、少年アマルは妻の村の縁者の子で、幼くして母を、つい先日父を亡くしたと話し、昔は金を稼ぐことに取りつかれていたが、この子のためと思うと稼ぐのが喜びになったと打ち明ける。アマルは学者にはなりたくない、窓から見える丘の向こうへ行きたいと言い、丘は口のきけない大地が空へ手を上げて招いているのだと語る。

道に面した部屋の窓辺から、アマルは通りかかる人を次々に呼び止める。シャムリ川のほとりから来た凝乳売りには、行ったこともない村の様子を言い当て、売り声の節を教えてとせがむ。凝乳売りは代金を取らずに凝乳を分け、売る喜びを教わったと言って去る。時を告げる銅鑼《どら》を打つ番人は、金色の旗がひるがえる向かいの建物を王様の新しい郵便局だと教え、いつか君にも手紙が来るかもしれないと言う。アマルは大きくなったら王様の郵便配達になると言い出す。皆に恐れられている村長には、窓辺に座るアマルの名を郵便配達に伝えてほしいと頼むが、王様の友だちだと嘲られ、手紙を届けさせてやると言い捨てられる。花を摘みに行く娘スダは帰りに寄ると約束し、アマルは自分の名を忘れないでと頼む。最後に子どもたちに玩具をすっかり与え、郵便配達を一人連れてきてほしいと頼んで幕となる。

第2幕のアマルは床についていて、もう窓辺へも行けない。托鉢《たくはつ》僧に扮した例の老人が、人のいない、鳥ばかりのオウムの島の話を聞かせる。アマルは、ランタンを左手に、手紙の袋を背に山を下り、麦畑とサトウキビ畑を抜けてくる配達人の姿を思い描き、郵便局ができてからは家の中にいるのが好きになったと言う。マダブは、村長が王様に匿名で告げ口したと言い、王様の名をみだりに口にするなと老人をとがめる。やがて目の前が暗くなりはじめ、医者は戸も窓も閉めさせる。村長は白紙を見せて、これが王様の手紙だとからかう。

そこへ戸が破られて王の伝令が現れ、今夜王が訪れると告げる。続いて来た侍医は戸と窓をすべて開け放たせ、アマルは闇の向こうに星がまたたくのが見えると言う。マダブに王への願い事を勧められて、郵便配達にしてもらうと答えた少年は、灯を消して星明かりだけを入れた部屋で眠りに落ちる。花を携えて来たスダは、スダは忘れていないと耳元でささやいてほしいと侍医に頼む。戯曲は少年の死をことばでは告げずに幕を下ろす。

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