永
『永遠平和のために』
えいえん へいわのために
イマヌエル・カント·近代
共和制諸国家の連合と国際法による恒久平和の制度的条件を論じた、平和主義哲学の古典的小論文
哲学
この著作について
七十代のイマヌエル・カントが、フランス革命後のヨーロッパ情勢を見つめつつ発表した短い哲学的小論文で、近代平和思想の古典。
【内容】
本書は国家間の平和条約の草案という体裁を巧みに取る。最初に、平和実現のための「予備条項」として、将来の戦争の火種を残すような講和条約を締結しないこと、どの独立国も他国に相続・交換・贈与によって奪われないこと、常備軍の段階的廃止、他国の政体への暴力的干渉の禁止などが挙げられる。続く「確定条項」では、①各国家の市民的体制が共和制であること、②国際法は自由な諸国家の連合(連邦)に基礎を置くこと、③世界市民法は「歓待の権利」に限定されること、という三点が提示される。末尾の補遺では、人間の悪しき本性すら平和へ向かわせる「自然の狡知」と、政治の道徳化に必要な公共性の原理が論じられる。
【影響と意義】
国際連盟、国際連合、EU構想、国際刑事裁判所、さらには「民主主義国家同士は戦争しない」とするデモクラティック・ピース論に至るまで、近代以降の国際秩序の設計は、本書からの絶え間ない参照のうちに進んできた。ハーバーマスの『他者の受容』やポジティブ・ピース論の議論もその延長線上にある。
【なぜ今読むか】
戦争のニュースに囲まれ、国際機関の無力さに落胆する日々のなかで、「それでも平和のために制度をどう設計するか」という古い問いは、いまこそ有効である。二百年以上前の短い論文が、現代人に与えてくれる地味だが強い希望の設計図である。
著者
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